「あー、マイサン本当に可愛い」
「オイラ早く父ちゃんの所に行かなきゃ…うーん、ナマエさん離してよー…」
「えー、やだ。ねぇ聞いてよマイサン。最近グレゴリーのくそじじぃが私をこき使うの、癒して」


半分ほど終わった掃除を終わったと言い張って早数分。前方に私の癒し、マイサンを発見したからには抱きつかないわけにはいかない。
後ろからぬっと両手を回して抱き締めればマイサンは可愛いげのある悲鳴をあげて、私だと気づけば嬉しそうに名前を呼んだ。なにこの可愛い生物。
抱き締めたまま、あっちこっちとふらふら歩く。いつもなら見回り中のグレゴリーに見つかってお叱りを受けるけれど今日はなぜかグレゴリーに会わない。まさかマイサンは私のラッキーアイテムと化しているのだろうか。


「あっ、ナマエさんナマエさん!あの人!」
「んー?」


薄暗い廊下を過ぎて、ネコゾンビのいる部屋に差し掛かる時、目の前に見知らぬ人がいた。ああ、例の客か。
なにやら暗い顔をして俯いている。まぁ、私にはどうでも良いことだけど。
思い詰めてるようなところ悪いけど、ここでそんな暗い顔をしているだけもったいない。


「マイサン、シェフのご飯食べに行こう」
「え、うん。良いけど」


くるりと方向転換してその場をあとにする。
気に食わないな。なぜかそんな気分でいっぱいだった。




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マイサンは癒し