其の八※



・下ネタしかない、下品。ラッキースケベな銀さん。ヒロインがちょっと世間知らず。



戦の最中というのは酷く興奮する。興奮して五感が過敏な反応を示すのだ。そうでなければ、戦で生き抜いて行く事は出来ない。それはそれで良い事なのだが、困った事に戦が終わった後に興奮が冷め切らないというのが多々あるのだ。そういう時は決まって女を抱きに行くか、右手というお友達に抜いて貰うのだ。

だが、この近辺には遊郭なんてものは存在しないし、あったとしても女を買う金がない。

女、女、女…!
ああ畜生、女を抱きてぇっ !

本日もまた醒めない興奮を抱えてひとりごちた。
女っ気のない戦場では、男を抱くという風習がある。男の穴は女の穴よりも具合がいいと聞くが、生憎俺には男を抱く勇気も抱かれる勇気もない。そうなると、ひとり寂しくソロ活動するほかない。

俺の息子よ、今日は右手に慰めて貰うんだ。我慢しろよ 。

「はぁ……」
「なんだ、銀時。溜め息など吐きおってだらし無い。……蒟蒻とローション用意してあげるから、しゃきっとしなさいよぉ、もうっ」

やるせない気分になって溜め息を溢しているといつの間にいたのか、桂が横から茶々を入れてきた。

「なんで息子のソロ活動を応援する母ちゃんみたくなってんだよっ!つうかんな母親いねぇよっ!ていうか、なんで人の心情読んでんだよ!エスパーかてめぇ」
「エスパーじゃない桂だ。ていうか思い切り声に出していたぞ」
「マジでか」
「皆の要望で蒟蒻とローションは大量に買い溜めしているからな……沢山あるから安心しろ」

桂はこの上ないぐらいの清々しい表情で俺の肩を叩くと先を急ぐと言って、足早に去っていった。

「……なんで武器買う前に蒟蒻とローション大量買いしてんだよ」

血気盛んな野郎の集まりとは本当に厄介なものだ。あまりの馬鹿馬鹿しさに思わず吹き出した。




陣営に帰ると、千草が困ったような顔をしていた。あ、そういえば女いたわと胸中でごちた。
だが、俺からしたら千草は論外。巨乳じゃないし、色気が少しばかり足りない。

「銀さん、さっきね倉庫の整理をしていたら箱に沢山の蒟蒻とお化粧水みたいなものがあったのだけど……これ、なんに使うの?久坂さんに聞いたら食料だって言われたけど……使っていいの?」
「……あー……」

桂の馬鹿が余計なことをしてくれたせいで、ややこしいことになった。どう答えたら良いのか分からず、視線を反らす。まさか、蒟蒻を女の膣に見立てて野郎が自慰をする為に必要なものと言えるはずもない。久坂もきっと同じで上手くはぐらかし行きついた答えが食料なのだろう。

「うん、食いもん、なんじゃねぇかな……!ヅラがいざというとき買いだめしてたみてぇだし。蒟蒻うめぇもんな。……俺、おでん食いたいわ!今日はおでんでよくね?」
「え?今、夏だよ?」
「暑い夏に食うからこそ旨いって言うだろ」

俺の言葉を真に受けてか、夕飯は本当におでんが出てきた。しかも蒟蒻多目ときた。おまけで蒟蒻ステーキに、蒟蒻の刺身まで。蒟蒻のフルコースだ。
男達は蒟蒻の出所や用途を知っているので、オナニーに使う予定だった蒟蒻が夕飯に出てきて、それが自分の胃に納まることになるので素直に喜べない。
蒟蒻が大量に出てきたので作ってみました、テヘペロ的なノリの千草に真実を教えることは誰もできなかった。


蒟蒻騒動も一段落した夜半。千草に用があって、偶々彼女の部屋を訪れた時だ。

「ひゃっ」

部屋の中から短い悲鳴が聞こえてきた。半ば反射的に警戒心を漂わせ、千草の返事を待たずに襖を開ける。
が、そこには千草の姿しかなく……彼女はローションを手にして固まっていた。
俺の気配に気付いてか、ゆっくりと顔を向ける。
眉を下げ困惑した顔には、白い液体が付着していた。
顔と言わず、着物や果ては畳にも飛び散っていた。

なに、こいつ。ローション使ってオナニーでもするつもりだったの?女のオナニーってローションいらなくね?

状況理解が上手く出来ず、下世話なことを考える。

「……これお化粧水じゃないの?……間違って力を入れたら勢いよく飛び出すし、なんか、ヌルヌルする」
「……なんでそーなるの!」

前回撤回。オナニー用としてじゃなく化粧水かと勘違いしていたみたいだ。馬鹿だ。この女。普通、見たら化粧水じゃないことぐらい分かるだろうが!
と、ひとり胸の内でツッコミを入れた。

頭にハテナを浮かべて首を傾げる千草に「いい加減に顔を拭いてくれ!」と苛立たしげに言った。
だって、なんかもうヤバイ。
直感がそう告げた。
千草の白い顔に付着する粘度の高い液体。まるで、精液を顔にぶっかけたみたいだったからだ……。

エロいと感じた。そう思う自分自身に驚いて、更に苛立ち、俺は大股で距離を詰めた。風呂に入ろうと思っていたので、偶々手拭いを持っていたからだ。

が、しかし。

「うお」
「ひゃっ」

畳に溢れたローションを踏んで、足が滑る。普段の俺だったら、戦で培った防御反応で咄嗟に受け身を取ることが出来たのかもしれない。しかし、思わぬ事態に遭遇して動揺していたのか運悪くも千草の上に倒れてしまった。
咄嗟に手を出したのだが、掌に感じた感触は硬い畳ではなく、突き立ての餅のような弾力のある何か。
掌にすっぽりと納まるサイズ感の大福……ではなく千草の胸だった。
俺の掌に吸い付くようにしっとりとしていて、それでいてふかふかに柔らかい胸。
俺があげた着物は千草の華奢な身体には大きいのか簡単にはだける。反対側からは形のよいお碗型の胸がまろみ出ていた。ノーブラかよ。てか乳首だけ上手いこと隠れやがって畜生!
風呂上がりなのか、白い肌は蒸気し朱に染まって、ほんのりと甘い石鹸の香りが鼻を擽った。
思わず、ごくりと生唾を飲み込む。
視線を下に転じれば、大きくはだけた裾から白い足と柔らかな太腿と、パンツがが見えた。お約束のようにピンク色だ。

これ、やべぇって……

下半身が疼いた。妙な熱を持ち始め、言い知れぬ衝動に刈られた。ヤリたい、セックスをしたいと本能が暴れだす。

「……っ、」

状況を理解した千草が顔を真っ赤にさせ、恥ずかしさからか涙ぐんだ瞳で俺をみていた。予想だにしないハプニングに驚いているのか声が出ないようだ。まるで金魚のように口をパクパクと動かしている。
なんでそんな表情するんだよ。畜生、可愛い。もっと啼かしてやりたくなるじゃねぇか。

「わ、悪い。今のは、事故だから。わ、わざとじゃねぇから。Toloveるだから……!」

慌てて千草の上から退いた。眼のやり場に困り、視線をさ迷わす。必死に平静を保とうと試みるも、先程から熱が昂っている股間が今にも爆発しそうだった。

「それ、もう絶対に使うなよ!いいな。あと、顔拭いてから部屋出ろよ。他の野郎にそんな姿見せたら駄目だかんな。絶対だ!」

一発で襲われちまう、と言いそうになったが何とか呑み込んだ。千草に目もくれず、足早に自室へ戻って、襖をぴったりと閉めた。万年床に寝転がり、着物の裾を割って褌を押し上げ窮屈そうにしている性器を取り出した。
腹に付きそうな程、いきり勃つ肉棒は赤黒くなり限界だとばかりに脈を打っていた。

やべぇ、俺幾つだよ

女の裸なぞ見慣れているはずなのに、千草のあんな姿を見ただけで、今までにないほど興奮していた。
右手で肉棒を握り、ゆるゆると上下にしごく。ずっと前に抱いた美しい遊女を想像しようと頑張ってはみるものの、脳内で再生されるのは先ほどの千草の姿だった。あのピンク色の下着の先に、指をいれたら、肉棒をぶちこんだら……彼女はどんな反応を示すのだろう。どんな声で啼くのだろう。そんな事を考えると、更に硬さが増した。


「……っ、はぁ……くっ、千草っ……千草っ……」

荒い息を吐く口は知らずと千草の名を繰り返し呟いていた。
マス掻きを覚えたてのガキのように、無我夢中で手を動かして頭の中で千草を犯す。

「……っ、くぁっ……!」

ローションではなく、自分の白濁の精液をぶっかけてやりたい。
そう思いながら、己の掌の中で射精した。

「……はっ、はぁ……あー……やっちまった」

下半身はすっきりしたが、酷い罪悪感に襲われる。野郎に襲われないように護ると約束した女を脳内で犯して、それをおかずにマスをかいて……なんて、明日から千草と顔が合わせ難い。
自嘲めいた乾いた笑みを溢した。







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