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 西暦二〇一四年。
――といっても、現代とは少し違う、また新たな「西暦二〇一四年」の話。
 一度崩れた世界を再生したとされる神――により創りだされた新物質「光素(ルクス)」により、世界は過去と違う発展を遂げていた。
 新たな物質による、新たなエネルギーの生成、新たな生物の誕生、新たな病気の治療方……。様々な「新たな方法」が生まれていた。
 しかし、その中でも際立って世界の発展に貢献したものがあった。
「異能(スキル)」と呼ばれる、人間個人が持つ才能に近い能力だ。それは恐ろしい程に幅広く、強大で人智を超えた力を持っていた。人々はこれを使い、時に悪用し、ここまで発展してきた。
 しかし、何もかもが良い物ばかりではない。汚染された物質を全て濃縮したような物質、「闇素(オブス)」が地上の一部に広がり、人々はそれから逃れるために幾つもの苦難を乗り越えてきた。
 やがて、異能の力もあり、闇素から逃げるための塔が建てられた。人々はそれを「神の塔(オリンポス)」と呼び、そこに逃げ隠れ、移り住んだのだった。

 ……そこで全てが平穏に終わると人々は信じた。だが、やがて、異能を持つ人間が「我々こそが至高の存在だ」と次々に豪語し始めた。そうして、異能を持たない人間は闇素の漂う地上――――「下界」に引きずり落とされ、そして次々に闇素に蝕まれ命を落としていった。

 「異能至高主義」――もう千年も前に始まり、未だ続いている、異能を持つ人間からの一方的な差別の始まりである。

 そして今現在、新西暦二〇一四年――A.R.2014ではその差別はいくらか緩和したものの、根本的な部分は何一つ変わっていない。
 百年程前から突如現れたAMUS(Abnormal Mankind Unification System)――異能統括機関という機関が、異能を全て管理しているように見えるが、その実態は強大な異能を持つ者だけを「神の塔」に保護し、それ以外の人間は下界に居させるという、ただ差別を行っているだけだ。
 それに対抗する術は力を持たない人々には残されておらず、人々はただAMUSに支配されるのみ……。

 そう思っていた。が、何も「神の塔」に居る人間だけに異能は発現するものではない。誰にでも、強大な異能が発現する可能性はあるのだ。
 次第に、下界でひっそりと生まれた、「強大な」異能を持つ人間たちは、自らを「イリオス」と名乗り、AMUSに対抗し始めた。
 どちらかが手を出せば、即戦争になりそうな状況……。
まさに、一瞬即発だった。
 そんな中、一人の青年――レイ=ザ=スカイは、この状況などまるで気にしていないかのように、ただ己の意志に従って行動していた。
「悪をこの手で裁く」という、この時代には不釣り合いな、しかし確固たる意志に従って――――。


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bkm
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