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「人斬りだああぁぁああ!!」

 突如発されたその言葉に、人々は慌てふためき、弾けるように逃げ出していく。
 家で寛いでいたはずの人々さえも、荷物さえ持たず逃げ出す。まるで、今から戦争でも起こるかのような騒ぎだ。
 だが、その原因となった青年は、彼らを追うでもなくただ自分の服についた血を拭うだけだ。
「……別に、君等に手を出す気はないんだが……まあ、仕方ないか」
 青年の名はレイ=ザ=スカイ。
右目にかかるよう整えられた黒髪に、ひと束だけ目立つような金色のメッシュが入っているという何とも奇妙な髪型。服装も、機関の制服を羽織っているのにその中には普段着のような服を着ているという……一般人からするとセンスを疑うような格好だった。
 だが、彼のそんな部分に目を向けるものは誰も居ない。
 彼は、「人を殺した」。その手に凶器は握られていないものの、彼の服についた紅い液体が全てを物語っている。
「悪く思うな。罪は、裁かれなくてはならない」
 上着の裏ポケットから、黒い液体の入った小瓶を取り出すと、レイは蓋を開け、その中身を目の前に転がっている死体に振り掛けた。
 液体が死体に触れると同時に黒い光が包み込み、そして、死体は一片の肉片も残さず黒い光となって散った。
「……さて、次は……」
 それを見届けると、レイは直ぐにその場を立ち去った。


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bkm
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