あぶないーー。
緊迫した叫び声が道路に響いた。自分にかけられたものだとは知らずに、ただその声に驚いて振り返った。その直後、車が急ブレーキをかけた音が鳴る。だれかの悲鳴みたいだった。まともに衝撃をうけた身体は、まるで人形のように宙に飛ばされる。つよく打った自分の身体はひとつも言う事を聞いてくれない。本当に人形になったみたいだと、どこか他人事のように思った。視界だけが鮮明だ。思考がかすれる。意識が遠くなる。さっきまで聞こえてたはずの音が全て消えた。覗き込む人の声も、車の走る音も。なんにも聞こえない。冬の道路が頬にくっついている。通常であればあり得ない目線。寒い。どこから来たのかわからない冷たさが刺すように襲った。
(いたい)
でも、どこが?
(たすけて)
ねえ、誰か。
カバンの中身はそこらじゅうに散らばり、履いていたクツも脱げてしまった。少女の想いは真っ赤な血液として、暗闇のようなコンクリートに流れつづける。染み込むこともなくただ広がりつづける。そして、だれにも届くことはない。
0.prologue
ニーナ(2013/12/12)
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