早朝、玄関にて
  銀時と妙



(なんやかんやで志村邸でご飯からお泊りした万事屋。からの早朝。仕事行く銀さんとたまたま起きたお妙さん玄関での会話です。短いです。)


「銀さん」
「あー、起こしたか。ワリーな」
「いいえ。これからお仕事ですか?」
「まあな」
「あら珍しい」
「失礼な。リピート客がいんのー」
「あなたの怠慢さを知っててリピートするってよっぽど物好きなんですね」
「本当失礼だねオネーサン。信頼と実績の賜物だっつうの」
「そういうことにしておきましょう。二人は?まだ寝てますけど」
「あーあいつらは別件」
「そうですか」
「まぁいくら仲良くてもやっぱ子供は連れて行きづれーしな」
「え?」
「一応お年頃だしよォ。これでも気ィ使ってんの」

褒めてよ。と言いながら、のそのそとブーツを履き始める。

「吉原だからさー。今日」

空が曇ってる。雨が降るかもしれない。吉原と言うと色恋の街だ。借りものの恋愛関係が売られている。だけどあの街にも本当の恋があることを、妙は知っていた。

「そうですか」

金色の髪の毛は闇夜に輝く月みたい。大きく入った顔の傷は、彼女の美しさと強さを一層引き立てている。あの人と、二人で会うの。

「では、頑張ってください」
「へーへー。稼いできます」
「私はもうひと眠りします」
「あ、あいつらちゃんと仕事行ったか見ておいて。午前中に出ないとダメだから」
「…はあ」
「あと俺、夜までかかると思うから、言っといて。」
「夜まで、ですか」
「ウン。飯いらない」
「…月詠さんと食べるの?」
「あー、さあ?まあ適当にするわ」
「銀さん」
「んあ?」

ブーツを履き終わった銀時が立ちあがって振り向く。三和土に立った彼はいつもより随分と背が低い。

「銀さんは月詠さんと付き合っているの?」

驚いたような瞳があって、そこでやっと自分が何を口走ったか気づく。

「…って、プライベートなことだから別に言う必要はないですけどね。最近仲良いみたいだし、いい感じだからちょっと気になっただけで」

言いながら妙は足を一歩引く。自分が干渉出来るような事ではない。新八や神楽とは違うんだから。ただ、本当に少し気になっただけで。変なことを言ってしまった自分に戸惑っていると、正面から深いため息が聞こえた。

「付き合ってねーよバカ」
「ば…バカとは何ですかバカ」
「ほんと壊滅的だな。お前のバカさは」
「殺されてーのかテメェは」
「はァ、もう本当いやンなるよ。お兄さん」
「なに、がっ…」

ぽん、と銀時の手が頭に置かれる。ぐりぐりと乱暴に頭頂部を押された。思わず顔が下を向く。

「ちょっ、何するんですか!背が縮む…っ」
「今日、夜、仕事終わったらすまいる迎え行くから」
「は?」
「客とのアフターもキャバ嬢仲間と寄り道もゴリラに送られるのもナシだから」
「な、に言って」
「いいか?仕事じゃなくて、お前を迎えに行くからな」

よく考えてろよバーカ。
言い残して銀時はさっさと出て行く。乱れた髪の毛もそのままに、妙はいつまでもその引き戸を見つめていた。


(2014.5.25 blogより)




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