(実写の近妙(銀)こんな会話してほしい)
2017/06/27 09:38



「いいんですか」床下から悪気もなく出てきた近藤がいやに真面目くさった顔で言った。不法侵入のくせに無駄に凛々しい表情が腹立たしい。
「あの男、また無茶しますよ。それもあの傷だ。今度は無事で済まないかもしれない」
妙はふうと息を吐いて、興味なさそうに近藤を一瞥した。
「そう思うなら、あなたが助けに行って下さいな。真選組って市民の味方なんでしょ?」
攘夷の絡んだ大きな事件が裏にあることも、万事屋が足を突っ込んでいることも気づいているだろう。わかっていながら見過ごしたのは、彼もあの男と同じ軸が身体の中に通っているからだ、と思う。勝手に。
「信じているんですね」
近藤は遠慮がちに、そして確信するように呟いた。目を閉じて雨の音に耳を傾ける。雨の中を歩くあの人の気配が流れてくるような気がした。女物の黄色い傘をさす姿を思い浮かべ、寂しげに笑いながら目を開く。面と向かっていってらっしゃいとは言えなかった。仮にも自分は彼を止めるためにここに来たのだから。でも、ごめんなさい。心の中で弟に謝る。役立たずね、わたし。押し付けたあの傘は、せめてもの約束だった。
「わたしがここで待っていれば」
我ながら可愛くない小細工だと思う。
「すこしはプレッシャーになるでしょう?」
妙は笑ったまま窓を見つめた。傷などひとつもなく、雨に打たれることもなく、しかし不安に耐える女がここで一人待っている。傘を見上げる度にそれを思い出せば、帰らなければという重圧や枷に少しはなるだろう。共に闘うことの出来ない自分は、待つことしか出来ないわたしは、そうやって信じるしかない。そろそろと大きな身体が床下から這い上がり、律儀に床板を元に戻して近藤は玄関へ向かう。その様子を目で追いながら、下から入ったなら下から出ていけばいいのに、と思ったけれど言わなかった。そもそもあなたどうやって入ったの?とも。万事屋の玄関扉に手を置き、雨笠を被った近藤がやっと妙を振り向く。
「プレッシャーどころか、」
どこに雨笠なんて持ってたのかしら。用意周到な不法侵入者だこと。
「死んでも生きて帰る力になりますよ」
朗らかな声を残して彼は去った。扉を開いた瞬間、雨音が大きく部屋に響いた。
「…日本語おかしいわよ」
雨に閉じ込められた部屋の中で、彼女は待っている。

comment (0)


prev | next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -