(銀妙)
2017/06/27 00:34



銀さんはぁ、好きな人いないんですかぁ?酒で顔が赤い妙の、とろんとした瞳がこちらを見つめていた。肘をついた手で頭を支え、ヘラヘラと彼女の顔を覗き込む。そんなのお妙ちゃんに決まってんじゃん。軽く甘く可笑しそうに笑って言う。妙は目を細め、そのままゆっくりと瞬きをした。店はいつも通りの騒々しさで人々の声が駆け回る。しかし二人の耳には遠い時計の音が聞こえていた。カチカチカチ。タイマーだな、と思う。カチカチカチカチ。どちらかが次の手を打たなければいけない。カチカチカチ、カチ、カチ、カチ。次の瞬間、妙はふざけた冗談とその空気に乗っかるようにへらへらと口角を上げた。いやだわ、またはぐらかして。グラスの中の氷が溶ける。銀時もまた大袈裟に笑い、まいったな、とわざと大きな素振りで頭を掻いた。はぐらかすのは、お互いさまじゃないか。カウンターに並ぶ意気地なしの男女が、酔ったふりで飲み続ける。夜が今日も落ちていく。

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