流れる雲をぽけーっと見つめる

先程の言葉が頭から離れない



『好きな奴いるから…』



ふっと感傷にひたる



「如月ー」



座る私の隣に山本はどさっと座った



「あれ?山本よく抜けられたね」



あの騒ぎの中心なのに

もうすぐ雲雀さんとか来そうだし



「なんか普通に来れた。みんな話に夢中だったぜ?」



要するに予想に熱中してるのかな



「昨日はびっくりした」



「うん。好きな子いるのにゴメン」



勢いとは言え



「や、うん、あれ?」



山本の方を向く

彼は首を傾げていて



「如月髪切った?」



「気付くの遅くね?10cm以上切ってるんですが」



笑みを零す

山本が髪に触れた



「如月って髪柔らかいのな」



彼を見上げる



「オレなんか、あー、ガシガシ?」



上手い表現が見つからなかったのか、疑問系だ



「へえ」



興味が湧いて、山本の髪に手を伸ばす

しかし触れるより早く、相手の髪が近付いた

否、顔が




ふわっ

すぐ目の前に彼の閉じられた瞳

それはすぐに離れる



「……は?」



私はぽかんとしてしまって

伸ばしていた手だってすとんと落ちて

まだ残っている感触

それにようやく思考が追い付いて、手の甲で口を押さえた



「オレ、お前のこと好き」



「え、うん、私も好き」



いつかのようなやりとり

いつかとは逆だけど

彼は困ったように笑い、頬をかいた



「そっちじゃなくて…。付き合ってほしい」



「どこに?」



首を傾げる

文脈がつながってないよ



「だからー、告白の『好き』」



あれ、耳おかしくなったのかな

告白とか聞こえるんだけど




ぷに

頬をつまんでみる

痛いし




頬をさすりながら山本を見る



「えーっと、つまり?山本は私を好き?」



「あぁ」



「んで、その『好き』がお付き合いしたいとか、恋人だとか、I love you!とかの方って?」



「あぁ」



それにぽんと手を打ってから



「うっっそだあ」



真顔でそう言い放つ



「いや、ほんとなんだけど」



「だって私が散々告白した時は普通に返してたじゃん!」



「あ、やっぱあれも告白だったのな」



やっぱり通じてなかったのネ



「いやー、オレも好きだったみてーだ」



「私馬鹿なんでもっと分かりやすく言って下さい」



全然理解が進まない

意外と心の傷は深いんだよ

あの連日の告白スルー

繊細な私の心はズタボロですよ



「あん時は気付いてなかったけど、オレも如月のこと好きだ」



「最近自分の気持ちに気付いたと?」



こくりと頷く山本にがっくりと肩を落とす

いや、自分の気持ちくらい気付こーよ




そりゃ私の気持ちに気づかない訳だ

自分の気持ちにも気付いてないんだから



「…じゃ私ら恋人ですか」



「如月もオレのこと好きって言ってたし、そーなるな」



なんかもう、雰囲気もへったくれもないよね…

私の悩んでた時間返せ

その時チャイムが鳴った



「戻るか」



山本が立ち上がって私に手を差し出す

その手を取って私も立ち上がった

しかし立ち上がってからも山本は手を離さない



「山本」



「名前で呼べよ」



山本が笑う

キラースマイル出さないで

身が持たないって



「…武」



それから離されない手を指す



「これ離してよ」



「手?オレは結と手繋ぎてーんだけど。嫌か?」



すっごい自然に名前で呼ぶし

さらっとそんなこと言うし



「…嫌じゃない、けど」



「じゃ、いいだろ?」



この先もこんな感じなんだろう

山本のペースに振り回されるんだ



「結」



私の手を引きながら、笑みを浮かべて山本が振り返る



「オレ、髪長い方が好き」



ほら

もうあなたしか見えない







fin


20100228

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