図書館の窓際の席の奥から2番目

そこは私の特等席

運動場が見渡せる

しかも木に隠れていて、向こうからこちらは見えない

その場所で私は放課後を過ごす

開かれた本はめくられることなく

ただ、あなたの姿を見ていた




今日もあなたを見つめる

最初のキャッチボール

あなたはいつもの場所に




でも今日は相手のボールがすっぽ抜けた

ボールは転がって、私から見える位置で止まる




山本がボールを拾い上げた

あまりにも自然な動作だから、隠れる暇もなかった

ばっちり視線が合う




(びっ……っくりした)

ボールを返してグラウンドから出て行ってしまった山本から視線を外した

手元の本に視線を落とす

見るもののなくなった私は、大人しく本を読むことにした




誰もいないかのような図書室

図書委員は奥の方に行っているのか、見当たらない

ガチャ

古くなってきた扉が軋む




ああ、誰かが入ってきたみたいだ

本から目を離さずにそんなことを思う

そう思ってること自体、本に集中してない証拠なのたけれど

ところどころ黒ずんだ薄いカーペットは、足音を吸い込む

もう入ってきた人がどう動いたか分からなくなってしまった




トン

肩をたたかれ本から顔を上げる



「よっ」



思わずぽかんと口が開く



「…山本?」



なんでここに?とか聞きたいことはたくさんあるのに、全部喉元で止まってしまう



「まだしばらくいるのか?」



「…そのつもりですが」



本を閉じて机に置くと、体ごと山本のほうを向いた



「じゃあ一緒に帰ろーぜ」



それに少し顔をしかめる

あんま一緒にいるのは生殺し状態でキツいんだよなー




山本を見ると、自分で言った言葉に戸惑っているようだった

それから私の表情に気付いて、苦笑する



「うちの寿司オゴるからよ」



「行くっ!!」



あっさり寿司に釣られてしまった

ま、いっか



「山本、部活は?」



「あ、やべ。終わったら来るからここにいろよ」



「へーい」



離れていく山本を横目に本を手に取った

開きかけて気付く

しおり挟むの忘れてた

(動揺してるなあ)

先程までの自分を振り返って少し笑った






20100225

- 6 -


[*前] | [次#]
ページ:


戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -