あれから季節ばかり過ぎていく

紅葉が紅く染まった




体育祭

自分の出る個人種目は全て終わり、私はぼーっと座っていた

それでも目で追うのはただ一人

1着を取った山本にクラスメートが集まる



「行かないの?」



私の隣に来たのは沢田綱吉

同じ中学だったが、この数年で随分変わった

ダメツナと呼ばれることはもうないし、背だって伸びた



「ここ、座っていい?」



「どうぞー」



微笑みながら頷き、視線を山本に向ける



「行きたいけど暑いからさ」



日陰にいるの、と笑う

沢田も笑ったが、少し真剣な顔でこちらを見る



「あのさ、山本に『好き』って言うなって言われたんでしょ」



彼に直接聞いたんだろう

沢田の口調は断定的だ



「そうさせたの、オレかもしれない。ごめんね」



ぽかんと彼を見る

それから笑った



「そんなの言わなきゃ分かんないのに」



私は立てた膝に頬を乗せ、沢田を見つめる



「いーよ。わざとじゃないんでしょ?」



きっとそうさせるつもりではなかったんだろう

だけど彼の言葉は山本にそうさせた




まだ友達をしなきゃいけないのが、山本を好きなのが、辛い



「違う人を好きになれてたら、もっと楽だったのかなあ」



ぽつりと呟いた

沢田は山本を見る



「…オレは、如月さんが山本を好きになってくれて、あんなに告白してくれて嬉しいよ」



友達としてね、と言う沢田に顔を上げた



「山本あんなだから、誰も好きになりそうにないし。っていうか、自分が誰を好きって言うのも気付かなそうだし」



沢田は苦笑する



「だから、如月さんがあんなに分かりやすく告白してるのを見て安心する。ま、気づかない山本にも呆れるけどね」



いたずらっ子のように沢田は笑った

ほんと印象変わったな

友達の為に嬉しいと言えるあなたは、とても素敵だと思う



「もっと沢田と話しとけばよかったなあ」



首を傾げる沢田



「もっといろんな事話したかった」



すると彼は穏やかに笑って



「今からたくさん話せばいいんだよ。相手の印象なんて、いつ変わるか分からないんだから」



それに目を丸くする



「そうだね。ありがと、ちょっと元気出た」



穏やかな風が吹く









本当はね

もうやめようと思ってたの

山本を好きでいることを




だって望みないじゃない

そんなのただ辛いだけで

挫けてしまうところだったの




だからあなたが言ってくれてびっくりした

まだ好きでいていいのかな

山本に好きになって貰いたいって思っていいのかな




あなたが嬉しいと言ってくれたから

例え単なる励ましでも

もう少し頑張ってみようと思うんだ




だって、相手への印象はいつ変わるか分からないんでしょう?

そんなこと言われたら、期待したくなっちゃうじゃない






20100223

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