依頼主




無事仕事を終え、外に出る

春が近いとは言え、まだ寒い外気にマフラーに顔を埋めた



『やぁ』



歩いていると建物の影から人が出て来た

ルーポ・ゲパルド

ロンディネファミリーのボスだ



『何の用?』



好青年風のルーポは優しく微笑んだ

その笑みのまま



『依頼失敗したんだって?』



隠し通せるとは思ってなかったし、隠す気もなかった



『だったら?』



『知っているだろう?ボクのファミリーの掟。敗者には死を』



瞬時に殺気が膨れ上がる

舌打ちと同時にナイフを構えた

月が雲に隠れる

辺りが暗くなる



「ファミリーに入った覚えないんやけど」



そんな軽口を飛ばす

さっきの掟はただの口実

それは結にも分かっていた

ロンディネがボンゴレのボスを狙った

その情報が漏れる前に口封じに来たのだろう



『行け』



影が飛びかかってくる

ちらっとルーポを見つめた

今回はなんと言ったのか

結はため息をついた



『お前』



向かってくる黒ずくめの人を見つめる



『右に気を付けた方がいいよ』



一瞬注意が右に向いた

しかし何も起こらない

その瞬間に鳩尾をついた



『うっ…ぐ』



(まだ寝えへんか)

睨み付けて来る瞳には憎しみも悲しみもない

あるのは強い使命感だけ

だからこそルーポの部下は自らの命も省みずに向かってくるのだ

(そんな奴殺したら、寝覚め悪いやろーが)



動けないらしい部下を放ってルーポに向かう



『後ろ危ないよ』



ルーポは動く様子もない



『騙されるとでも?』



確かに急襲にはあまり対応できない

予め仕掛けられる訳じゃないからだ

…たくさんは



『あ、そ』



カチ

ルーポの後ろからナイフが数本飛び出す

それは見事にルーポの背中に刺さった



「ほんまやってんなー」



日本語だったが、なんとなく馬鹿にされた気がしたのだろう



『…』



俯いていた顔がこちらを向いた

先程と同じ笑みを浮かべ、瞳だけが冷める



『…殺すよ?』



彼は背中にナイフが刺さったまま銃を撃ってきた

軽やかに避けて路地裏に踏み込む

ルーポの銃声が追って来ていた

(しつこい)

そう思いながら角を曲がった時、誰かとぶつかった



『ごめんなさい』



謝ってから銃声が近付いて来ているのに気付く

相手も結の後方を見た

暗くて分かりにくいが、驚いている

(…ような気ぃする)



「ほんましつこいわ。あれか?食器の油汚れ目指してるんか?」



小さく毒づいて、ぽかんとこちらを見る青年を安心させるように微笑んだ

一瞬敵かもしれないと思ったが、青年からは殺気も敵意も感じない

その手を引いて走り出す



『巻き込んじゃってごめん』



そう言うと青年は手を握り返してくれた



◆◆◆◆◆◆◆◆




『…もう追って来ないね。ここまで来たら大丈夫だから。ここではさっきの奴も手を出せないはず』



なんたってボンゴレ本部の目と鼻の先だし

そう言って手を離す

(ん?)

手を見ると、確かに結は離しているのだが、青年ががっちりとつかんでいた



『離してくれない?』



訝しげに青年を見る

月が雲の隙間から顔を出す

青年の顔が月明かりに照らされる



「久し振り。侵入者さん?」



沢田綱吉は微笑んだ







20100305

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