逃走者




ドガァアン

背中に走る痛み

爆風で吹き飛んだ

何とか着地するものの、誘い込んだ場所から離れてしまう

舌打ちをして手近な窓を割って外に出た




子猫を離し、とにかく走る

後ろから銃声

役に立たなくなったジャケットを放り投げ、銃弾を防いだ

玄関はきつい警備

周りの塀には軽い電流が流れており、軽いと言っても大の男が気絶するくらい




ジャンプ力には自信がある

近くの木に登り、塀を飛び越えようと膝を曲げたとき



「みゃあーお」



「げっ」



先程の子猫が下で鳴いている

銃弾はそこまで迫っており、このままでは撃ち殺されてしまうだろう



「〜〜〜〜っあぁもう!」



結は少しの逡巡の末、木から飛び降りた



『そこまでだ。動けば撃つ』



リボーンが銃口をこちらに向けて言い放った



「はよどっか行き」



足で猫を追い払いながら両手を挙げる



『そのまま武器を捨てろ。ゆっくりだ』



隠していたナイフをその辺に放る



『トラップの起動装置は?』



黙って取り出していく

次々と捨てられる起動装置の山

ピアスも外して捨てると、再び手を挙げた

ようやく猫は離れていったようだ

リボーンは部下に顎でしゃくった




◆◆◆◆◆◆◆◆





連れて行かれた部屋

目の前にはターゲットの沢田綱吉

周りには幹部の面々

結は手を後ろで縛られたまま、椅子に座っていた

ニット帽は取られたが、顔を覆う布はまだ取られていない



「君は日本人だね」



綱吉の言葉は穏やかだ



「これは誰の差し金?」



沈黙を守る

こちらも一応プロだ

依頼主の情報は漏らさない

その後も色々聞かれたが、結ばれた唇が開くことはなかった

綱吉が息をつく



「さて、どうしたもんかな」



『先に言っとくけど、拷問とかしても無駄だから』



静かに紡がれる言葉

テノールの声が響く

その手の訓練は受けているのだ

痛いのに変わりはないが、慣れた

綱吉がじっとこちらを見る



「そんなに忠誠を誓ってるの?」



わざと日本語が分からない風に装う

同じ事をイタリア語で聞かれた



『まさか。雇われてるだけ。向こうにしてみれば、私なんか捨て駒だ』



息をつきながら淡々と言う



『雇い主は君が失敗したらどうするの?』



『さあ?』



肩をすくめた

そっと全員の位置を確かめる

彼らは結をどうするのか話し合いだした

ある程度何か話しておいた方が、聞く方の意識が離れやすい




(さて、逃げますか)

誰にも聞こえない小さな音で、何かのスイッチが入る

ドカァアン

チャンスは一度

綱吉達が爆音に気を取られたほんの一瞬

結は関節を外して縄を抜けた

そのまま扉へと転がり込む




「取り押さえろ!」



誰かが叫ぶがもう遅い

彼らが呆気に取られている内に走り出した

結を一度捕らえたことで、警備の手は緩んでいる

結は玄関に突っ込み、街へと飛び出すとすぐに人混みに紛れ込んだ







20100304

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