暗殺者




結は準備を終えると、人通りが絶えたのを見計らって扉をノックした



『誰だ?』



ごく自然に尋ねる声は扉の奥からだ

それには答えず、少し高い天井の電灯に逆さまにぶら下がる

首にかけていた布を目の下まで引き上げ、ニット帽を目深にかぶる

結んだ髪が重力に従うのが分かった




ガチャ

扉が開き、中からターゲットが出てきた

電灯から体を離し、落下しながら手にしたナイフを振り下ろす

当たる直前にターゲットが飛び退いた

それに構わず四つん這いで着地すると同時に、背を向けて廊下を走る




奇襲に失敗、逃亡

とでも思って貰えれば上々だ

後ろからターゲットの足音と声が追ってくる

恐らく仲間を呼んでいるのだろう




廊下を左に曲がる

その先は一本の長い直線

その半ばまで差し掛かった時、前から走ってくる足音に気付いた

スピードを徐々に緩めて足を止める

すると追っ手も立ち止まった



『もう逃げられない』



ターゲットが言う

結は肩をすくめた



「恭弥。…殺すなよ」



先程までのイタリア語とは違い、日本語で仲間に指示を飛ばす



「チッ、面倒だね」



雲雀がトンファーを持ちながら一気に距離を縮めてくる



『下』



「?」



結は面倒そうに耳元をこすった

その呟きに雲雀が眉を寄せるのと同時に、彼の足元から三つの鉄球が飛び出す

走っていた為少し前屈みだった雲雀は、トンファーでなんとか防ぐが、防ぎきれなかった一つを腹で受けてしまう



「くっ」



周囲に緊張が走る

雲雀の殺気が膨れ上がった



「果てろ!」



加勢に回った獄寺のロケット付きのダイナマイトが飛んでくる

それをひょいと避け、腕を払った



『上』



見つめられた獄寺は自然と上に意識を向けた

しかし右からナイフが飛んでくる



『なんてね』



結が舌を出す

獄寺は辛うじてかわしたが、いくつか脇腹を掠った

ようやく落ち着いて辺りを見回す

(全員幹部か)




山本と了平が突っ込む

結はジャケットの襟を正した

二人の頭上から大量のナイフ



「罠のプロか」



結はポケットに手を入れた

ターゲットは一人

綱吉の両隣の壁から複数のナイフが飛び出した

リボーンとランボがそれを防ぎ、綱吉がこちらに向かってくる

他の人たちも体制を立て直した

一斉攻撃




頭の後ろで手を組む

四方から銃弾が彼らを襲った

それらは止まることを知らず、雨のように降り注ぐ




そんな中一発も掠ることなく、結は悠然とナイフを取り出した

銃弾の雨に相手は混乱している

今がチャンス

それに気付いた獄寺が苦し紛れにダイナマイトを投げた




なんの細工もないただのダイナマイト

先程と同じように避ける姿勢を見せる

しかし



「にゃぁあ」



どこから潜り込んだのか、子猫が足元で震えていた

避けたら確実に子猫に当たる

反射的に猫を抱え込んだ







20100304

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