昼休み、あたしは友達と廊下を歩いていた

その時、視界の端に数人の女の子が入る

晴子ちゃんと、…流川くんの親衛隊かな




友達と別れてそっと近付く

そこは校舎の中からは見えにくい

あたしは耳を済ませた



(普段はこんなことしないからっ)



「…たが……て、いつ……け…」



聞こえにくい

内容までは分かんない




パアンッ




乾いた音が響く

驚いて見ると女の子の一人が晴子ちゃんをはたいたのだ

もう一度手を振り上げている

あたしは慌てて飛び出した



「何してるの?!」



女の子の手をつかむ

はっと女の子たちは顔を強ばらせ、あたしの手を振りほどいて走っていってしまった



「晴子ちゃん、大丈夫?…じゃないか。痛いよね」



彼女の頬は少し腫れていた

一体どれだけ思いっ切り殴ったんだ

晴子ちゃんは呆然と頬を押さえていた



「保健室行こう?」



そう言った時、晴子の目から涙が零れた

一度溢れた涙は、止まることを知らないように流れ続ける



「私、そんなに嫌われること、しちゃってたのかな…」



あたしは晴子ちゃんの手を握る



「大丈夫。さっきの人たちのことは忘れちゃえ。だって晴子ちゃんの周りには、晴子ちゃんのこと好きな人がたくさんいるじゃない。あたしもだし」



(そして、桜木くんも…)



「あの人たちが晴子ちゃんを嫌いって言ったなら、あたしがそれよりもっと好きになるよ」



じっと晴子ちゃんを見つめる

彼女も少し落ち着いてきた



「…うん、ありがとう結ちゃん」



その時凄い勢いで誰かがやって来た



「晴子さん!!」



桜木くんだ

彼は驚くあたしを見る



「晴子さんの顔、ハれてる。オマエか」



「…え…?」



突然のことに体が動かない

何で?

桜木くんが、怖い



「待って桜木くん!違うの!」



「晴子さんはヤサしいですね。殴られてもこんな奴、カバうなんて」



そうか

桜木くんは晴子ちゃんが全てだから

あたしがやったと思い込んでるんだ



「けどオレは、晴子さんを泣かす奴はユルせねー」


ぐいっと襟をつかまれる

そのまま勢いよく殴られた

やば、意識飛びそう



(痛いのは、殴られた頬?それとも…)



地面に倒れ込む



「桜木くん?!」



晴子ちゃんが駆け寄る



「結ちゃん!大丈夫?!結ちゃん!」



「…へーき。桜木くんを怒らないで。晴子ちゃんを心配してるだけなの」



あたしは口角を上げる



「ね、ほら、二人で保健室言って来なよ。あたしなら大丈夫だから」



半ば無理やり、桜木くんの所に押し戻した

昼休みの終わりをチャイムが告げる

あたしは頬を押さえながら、のろのろと部室に向かった







20100214

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