今日は陵南高校との練習試合だった
結果は惜しくも負けてしまったが、収穫のある試合だった

今回が初試合の桜木くん
やはり底知れない能力を感じた

湘北は荷物を抱え、歩き出す
あたしも歩こうとした時、荷物の重さにバランスを崩して体が傾く

「わっ」

「っと、大丈夫」

顔を上げると仙道さんが支えてくれていた
慌てて体勢を立て直す

「すみません!!ありがとうございます!」

ぺこりと頭を下げた拍子に、またこけそうになった
今度こそはこけまいと足に力を入れると、肩に掛けていた荷物が遠心力でまわる

あっちにふらふら〜
こっちにふらふら〜

最後にくるっと回ってようやく安定する
我に返った時は既に遅かった

仙道さんは腹を抱えて笑い出した
目元には涙まで浮かんでいる

(恥ずかしすぎる!!いっそこの場で殺してくれ!!)

暫くして笑いが収まった仙道さん

「そう言えば、湘北の人達もういないけど」

がばっと振り返る
確かに誰もおらず風がむなしく吹く

…とそんな説明をしている間にも、またあたしは荷物に振り回され

くるっ

すちゃ

ターンを決めて止まる

(って違ぁああう!!)

「ぶっ」

仙道さんが堪えきれずに吹き出した








あの後仙道さんに謝りまくって、今は駅に向かっていた
彩子さんに連絡は入れたし、取り敢えず問題ないだろう

駅の中に入ったとき、見知った赤が目に入った
動く人波の中、一人立ち止まってこちらを見ている

「桜木、くん」

びっくりした
ほんとびっくりして、切符を仕舞おうとしたまま固まってしまった

「彩子さんに言われて、ムカエに来た」

さっさと歩き始める彼に、慌てて走る
横に並ぶとちらっと視線を投げかけて来た

「如月さん、オレのことコエーか?」

「えっ…とー、その、」

「ハッキリ言ってくれ」

「はい怖いですすんません」

そう言えば、彼は面白くなさそうな顔をした
それが拗ねた子供のようで、少し笑ってしまう
ギロッと睨まれて、その笑顔も引っ込んだ

(だからそれが怖いんだって)

(言わないけど。怖いもん)

「ごめん、怒った…?」

そおっと顔を見上げると、彼は複雑そうな顔をした

「別に怒ってナイ。こういうカオだ。オレよりセンドーの方が良かったか」

突然出て来た名前にきょとんとする
何でここで仙道さん?

突然軽くなった肩
桜木くんが荷物を持ってくれたのだ

「ありがとう。桜木くんは怖いけど、怖くないよ」

言ってることが矛盾してる
だけど本当にそうだから

「それに仙道さんの方が良いことないよ。あたしは桜木くんがいい」

真っ直ぐに彼を見つめた
綺麗な瞳
彼は照れたようにそっぽを向いた

「帰るか」

「うん!」

あなたの隣に
そう、例え今だけでも
あなたの隣に居られて幸せです







20100105

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