ぬっと遮られた視界
あたしは顔を上げた

短ランに赤い髪
背の高い男の子

怖そうだな
第一印象はそれだった

身長は軽く180cmを越えているだろう
そんな人が入学式の今日、あたしの前に立っていた

新入生は自分のクラスを確認するために、掲示板の前に集まっている
かく言うあたしもその一人なのだが、前の人のせいで全く見えない

その時、男の子のポケットから写真が落ちた
拾ってみると、女の子が写っている
彼女だろうか

彼は気付いていないようで、そのまま歩いていこうとする
あたしは慌てて自分のクラスを確認してから、彼を追い掛けた








校舎裏まで来てようやく追い付いた

「あの!」

声を掛けてからはたと気付く
怖い人だったらどうしよう
恐る恐る見ると、彼はこちらを見ている

「これ、落としたよ」

思い切って写真を差し出すと、彼は目を丸くしてポケットに手を入れた

「ナイ」

それから写真を受け取ると、それをじっと見つめる
ほろりと彼は涙ぐんだ

「え?!どうしたの?!」

こんな怖そうな人が泣きそうだから、あたしは本当にびっくりして
思わず近寄ってハンカチを差し出した

(良かった持ってて)
(もしかしたらずっといれっぱなしのかもしれないけど)

彼はそれを受け取るが、使おうとはしない

「どこか痛いの?」

そう聞くとフルフルと首を振って

「フられた」

短く一言
写真の人にだろうか
あたしは思わず丸くなった背中をポンと叩いた

「きっとまた、良い人に会えるよ」

「…そうか?」

あたしは頷いて、我に返った
バッと手を引っ込める
何してんだ、あたし

(今の完全に子供扱いだったよね)
(…こっ、殺される!!)

「や、えと、そういう事で。じゃっ!」

シュタッと手を上げ、あたしは逃げるようにその場を離れた
うん、逃げたとも言う

あの人、見た目が怖い
でも、もしかしたら良い人なのかもしれない
ほんのちょっぴりそう思った

(ほんのちょっぴりね)









20091218

- 1 -


[*前] | [次#]
ページ:


戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -