風邪を引いた

どうやらオレは高熱のようで、頭がぼんやりとする

ピピピ

体温計が計り終えたことを知らせる

「38.8か。立派な風邪だね。こんな所で寝るからだよ」

起きたときオレはリビングのテーブルに突っ伏して寝ていた

結さんが呆れたように笑う

オレは曖昧に笑った

だって言えないよ

布団で眠る君の顔を見ている間に寝てました、なんて

「薬も飲んだし、少し寝ときなよ」

彼女の手が、あやすようにオレの腕をポンポンと一定のリズムでたたく

その温もりを感じている内に、いつしか眠っていた







目が覚めて、一番に彼女の姿を探した

どこに…

ガチャ

扉が開く

「あ、起きた?丁度良かった。お昼にしよーか」

彼女が微笑んだ

持ってきてくれたお粥を大人しく口に運ぶ

それにしても、お昼一緒に食べるの日曜日以来…

ガバッと時計を見た

昼過ぎ

「結さん、学校は?!」

そんなオレの頭に手を乗せ笑う

「休んだ。気にしなくていーよ。今日はサボりたい気分だったから。それに、多少行かなくても問題ないくらいのことは、してきてるからね」

彼女の手がオレの額に触れた

冷たくて小さな手が気持ちいい

「うん、熱は下がったね。あとは寝てたら治るでしょ」

満腹感で重くなっていたオレの瞼は、その言葉を最後に完全に閉じた







夕食の頃にはすっかり良くなっていた

体が軽い

今日の勉強は大事を取ってナシになり、オレは宿題をする結さんを見ていた

真っ直ぐに伸びた長い髪

少し茶色がかっていて、光に透けて見える

視線を落としている瞳は、少し吊っているが、彼女の優しい眼差しを損ねる程ではない

特に美人と言うわけではないが、人柄が顔に出ているのだろう

可愛いと、特別な感情を抜きにして思える

すっとその頬に触れた

揺れる髪

彼女は驚いて顔を上げた

「どうしたの?」

問われて、ようやく自分が無意識に行動していたことに気付いた

それでも、言葉がするっと出る

「結さんとくっついてたい」

自分でも驚くような大胆な言葉

結さんは目を丸くしてから、微笑んだ

「風邪の日は甘えたさんだね。テレビでも見ようか」

ペンを置くと、自分の頬に触れたオレの手を引き、テレビの前に行く

二人で座るソファ
ぴったりと寄り添ってオレ達は画面を見た

オレは見ている番組も頭に入らないで、隣にある温もりを感じていた

彼女はオレに特別な感情を持っていない

向けてくれるのは、弟、あるいは息子に向けるような優しさ

今も、病気で弱ったオレを包んでくれているだけ

それでもいい

もう少しだけ、このままで…

オレは頭を彼女の肩に乗せた






20091128

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