空を見上げて想うのは、君のこと

優しすぎるマフィアのボス

ねえ

あたし知ってるよ

君が人の命を奪っていることも

そのために傷付いていっていることも

みんなは隠そうとしていたみたいだけど

半年も住んでいれば、分かるよ

夜中に会う君が、時々血に染まって帰ってくること

一度彼はあたしに気付いて、「ちょっとドジっちゃった」って言ってたけど、あれは誰かの返り血でしょう?

そんなの全然、気にしないのに

それよりもあたしは、優しすぎる君が壊れてしまわないか、心配だった

だからただ、受け入れて上げたかった

だけどあたしには人を殺す覚悟なんて無くて

君のことを本当には分かって上げられなくて

ただただ弱くて

何もしてあげられないなら、何もできない距離にいたい

これは自分の為

あたしは何もできないと、言い訳する理由がほしいの

こんな我が侭なあたしを許して

だからあたしは今日も祈るの

この世界から消えたいと








「結の居場所がわかった」

リボーンの言葉に動きを止める

焦る自分を抑え、彼を見た

「どこ?」

「ヴァリアー本部」

オレは眉を顰める

灯台下暗しとはまさにこのことか

だが、ザンザスが彼女の滞在を許すなんて

「今から行くと連絡入れて」

オレは立ちながら指示を出す

やっと会える

どうかまた、あの優しい笑みをオレに向けて







外は雨

主のいない部屋で窓の外を見る

ガチャ

扉が開くが、反応もしない

「何をしている」

初めて会ったときと同じ問い

背中から抱きしめられ、驚いて離れる

それから苦笑した

「空を見てるだけ」

静かな部屋に、雨の音と二人の会話だけが響く

「なら質問を変えてやる。誰の事を考えてる?」

紅い瞳に射抜かれ、言葉を失う

この瞳には嘘も誤魔化しも、通じないんだろう

「あたしの、大切な人」









オレの問いに答えた結は、綺麗に笑った

美しいと思った

同時に、泣きそうにも見えた

大切な人

それはオレではないんだろう

もう一度彼女を抱き締めた

いつものように小さく抵抗するが、いつもと違いオレは離そうとしなかった

「ザンザス?」

彼女の言葉に返す代わりに、抱き締める腕に力を込めた

すると彼女は抵抗をやめ、オレの背中を軽く、あやすように叩いた

安らぎとはこう言う事なのだろうか

「…ボンゴレ本部にお前の居場所がバレた」

結はそのまま、小さく息をついた

「そう。じゃ、迷惑掛ける前に出て行かなきゃね」

そう言って離れる彼女

「迷惑じゃねえ。ここにいろ」

彼女は首を傾げる

「でも、」

「オレがいいって言ってるんだ。黙って従っとけ」

その時、車の止まる音が聞こえた









20091209

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