目を開けたら、パッツンの男の子のアップでした

「うわあっ」

慌てて飛び起きると、彼は笑いながら飛び退く

「ししっ、もうちょっとでキスだったのになあ」

展開についていけない

彼は誰?

ここはどこ?

あたしは誰?

いや、あたしは如月結だけどっ!

「あの、どちら様?」

「それはこっちのセリフだし。ボスが連れてきてから3日も寝てたんだぜ?あんた」

そこにもう一人やってきた

「もう、ベルちゃん。病人の前では静かに…あらあなた、起きたのね」

「う゛ぉぉおい、ベルぅぅう!オレの飯食っただろぉぉお!」

「ルッスーリア、ボクの朝食まだ?」

「ボスが直に起きる。早くボスの食事を」

人がわらわらと入ってくる

訳が分からない

あまりの騒々しさに耳を塞いで様子を見た

部屋の扉が勢いよく開く

一気にしーんとなる中、あたしは扉の方に目を向けた

長身の男が立っている

「…うるせえ、カス共が」

誰も口を開こうとしない

「あのぉ…」

そろりと声を上げると、扉の所の男が目を向ける

「状況についていけないんだけど…」

何故か周りの人達が凄い形相でこちらを向く

その人はあたしの前まで歩いてきた

どうやらあたしは病み上がりのようで、反応が鈍い

頭はようやく冴えてきた

「あー…、君ザンザス…さん」

見た事ある顔だと思ったら、暗殺部隊の隊長さんじゃありませんか

「ほう、オレを知ってるのか」

あれ、言わない方が良かった?

「そんなに知られるような仕事じゃねえんだがな」

墓穴掘ったようです

ガッと首をつかまれ、足が宙に浮く

「…くっ」

反応鈍すぎ

体が動かしづらい

「何者だてめえ」

「…はっ、…これが人に、物聞く、態度…?」

酸欠なりそ

その前に死ぬかもしれない

こんなところで死んでたまるか

あたしは首をつかむ手の甲に手刀を入れ、下からは膝を叩き込む

人間なら一瞬痺れる場所

彼も痺れた拍子に、握力が下がる

その隙にあたしは彼の手から逃れた

てかさ、ザンザス相手なんて勝ち目ないじゃん

周りにはヴァリアーの皆さんもいるしさ

ザンザスの目つきが鋭くなる

「喋りにくいから、普通に聞いてよ」

ケホッと咳をしながら言う

ザンザスはしばらくあたしを睨んだ後、急に笑い出した

「おもしれえ。丁度退屈してたとこだ。オレの相手しろ」

そのまま彼は、あたしを肩に担ぎ部屋を移動した

部屋に着くと床に放り出される

なんとか着地したが、あたしはそれどころではなかった

「なんだお前、急に元気無くなったな」

あたしは青い顔をして口元を押さえる

「…………………酔った」

「は?」

そこからさあ大変

吐きそうと言うと、ザンザスにトイレに放り込まれ、今はソファで唸っている

「何に酔うんだ」

呆れたように言うザンザスを睨む

「あんな運び方するからでしょ!あんな気持ち悪くなると思わなかった…」

しかしそれも昼には収まり、ザンザスと共に昼食をとる

食事が終わってから、ザンザスに近寄った

「ねえ、ザンザス」

ちらっと視線だけこちらに向ける

「ありがとう。助けてくれて」

すると彼は目を丸くした

「どうしたの?」

「…いや、何でもねえ」

(礼なんて、初めて言われたな)

あたしは彼の部屋をきょろきょろと見回した

お酒、いっぱいあるなあ

「あ」

突然声を上げたあたしにザンザスは、顔を向けた

「ごめん、まだ名前言ってなかった。あたしは如月結。えっと、まあいっか」

「くくく、律儀な奴だな。ついでに何モンだ」

誤魔化した所を付いてくるなあ

「ボンゴレに保護されてた。もう出て来ちゃったけど」

隠す理由もないし、あたしは正直に言った

「そういや、ボンゴレから捜索されてんぞ、お前」

「マジで?」

ザンザスが机の上から一枚の紙を渡してくる

そこには見つけたら連絡するように、と書いてあった

どうして探すの

何のために手紙書いていったんだ

暗くなったあたしに気付いてか、ザンザスが近寄ってくる

あたしの顎をつかむと、口付けしようとして来た

あたしはそれを手で押し止めた

「何してるの」

「…おめえが暗くなるからだろ」

意味が分からない

「元気付けてくれようとしたの?」

首を傾げると、舌打ちされた

「…わりぃかよ」

あたしは微笑んだ

この人、ただ女の扱いに慣れすぎてるって言うか

そういう人しか近づいて来なかったんだろう

あたしが笑うのを見て、彼はもう一度舌打ちする

「ねえ、じゃあさ。ぎゅってしてほしい」

そう頼むと、面倒臭そうに、だけど抱き締めてくれた

「それからぽんぽんってしてほしい」

「ガキか」

言いながらも頭を撫でてくれる彼は、やっぱり優しいと思った









20091208

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