役にも立てないのに、あたしはどうしてここにいる?

ただ守られるだけの存在になんて、なりたくないの








あたしは部屋に着くなり、扉の前にしゃがみ込んだ

なんて弱い決意

なんて弱い自分

激しい自己嫌悪に陥る

あたしはただ、彼の役に立ちたいだけなのに

綱吉くんの傍にいる理由が欲しいだけなの

そこまで思って、はっと我に返った

何考えてるの?

これじゃまるであたし綱吉くんの事が




好き…?




彼は弟でしょ

…違う

本当は分かってた

彼との関係を壊したくなくて、ずっと弟だって思い込もうとしてた

思い込もうとしてる時点で、そう思ってないってことなのに

駄目だ

こんな想いのまま彼の傍にはいられない

どっちみち、ただの足手纏いなんだ

離れなきゃ

彼の迷惑にならないように

もっと彼を好きになる前に

だってあたしと彼は結ばれちゃいけない

ここを、出なきゃ







動きやすい服に着替え、荷物をまとめる

午後はボンゴレ全体で会議だ

あたしは呼ばれないが、みんなが会議室に集まる

その時がチャンス

「みゃぁあ」

足元にツナがすり寄る

あたしはしゃがんでツナを撫でた

「ごめんね。お前は連れていけない。ここに住む方がお前は幸せなの」

そしてツナの前足に紙を結ぶ

そろそろ行かなきゃ

「じゃあね、ツナ。きっと綱吉くんが面倒を見てくれる」

あたしは静かに部屋を出た

誰にも会うことなく、本拠地を出る

外は雨だった

この大雨の中歩く人はほとんどいない

あたしは空を見上げた

泣くには、ちょうどいい

何の涙なのか、あたしにも分からない

ばいばい

心の中で呟いた

歩いていても、当てがあるわけではなく、あたしは公園で雨に打たれながら、空をみる

どれくらいそうしていただろう

ザッ

前に、同じ様に傘もささずに立っている人がいる

「何をしている」

低い声

あたしは視線を向けた

「何も。君には何をしているように見える?」

返事を聞く前に体が傾く

意識が遠のく

最後に目尻からこぼれたのは、雨か涙か









20091208

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