次の日から悪夢は始まった

昨日も思ったが、ダンはどこからかあたしの家の場所を知ったようで、毎日家を出ると彼がいる

そこから大学までは徒歩なのだが、その間ずっと横に並んで、勘違い話を話し続けるのだ

「この前の試合ももちろん見に行ったよ。最後に勝利を決めるシュートを入れた後、君はボクのことを見て笑ったね。その時分かったよ。君はボクのことが好きなんだって」

最近では聞き流すのだが、精神的に大ダメージだ

大学にはさすがに入ってこないから、そこでようやく一息付ける

練習前から疲れているあたしをチームメイトが励ましてくれる

彼は既に大学で有名人で、あたしのこともみんな知ってる

今の所実害はないから放っているが、このままでは精神的に参ってしまうかもしれない

あたしは最近大学が開くと同時に入り、閉まるギリギリまでいる

ここが一番安全だからだ

そしてまた話を聞き流しながら家に帰るのだ







ある日の休日、珍しくダンと会うこともなく買い物に来ていた

「結さん」

振り返るとランボさんがいる

「ランボさん、久しぶりですね」

「さんなんて付けなくていいですよっ。オレの方が年下なんだし。敬語も」

「じゃ、ランボくんだね。ランボくん買い物?」

笑いながら聞くと、新しいティーカップを買いに来たらしい

「いい店知ってます?」

「そうだなあ、あの店とか…」

「結っ?!」

言い掛けたとき金切り声に遮られた

「うわ」

思わずそんな声を漏らしたのは、ダンがそこに立っていたから

「どういうことだ、結?!そいつは誰だ?ボクがいるのにそんな奴と会ってたのか?」

「ちょっとっ、人が見てるからっ」

人目を気にしてたしなめるが、もちろん聞いていない

「そんな奴やめとけよ!」

コソッとランボくんが聞いてくる

「彼氏?」

「いや、違う。雑誌見て好きになったとかなんとか」

彼はその間も一人で盛り上がっている

「そいつは女たらしの顔だ。どうせとっかえひっかえしてるんだ。君には合わない。やめときなよ」

ランボくんはさすがにプチンと来たのか、一歩出かけて、それをあたしが止める

あたしはダンの前に立つと、彼の顔をはたいた

バチィィン

乾いた音が響く

彼は目を見開いてあたしを見た

「いい加減にして。友達のこと悪く言うなんて信じられない。相手を貶めるより、自分を磨きなよ。それにあたしは君の恋人じゃない。人の話もっと聞いた方がいいよ。もうあたしの前に現れないで」

口元は笑っているし、口調も柔らかい

しかし誰の目にも怒っているのは明らかだった

さすがのダンもそれを感じたのか、何も言わずに結を睨んで立ち去っていった

それを見届けてから、申し訳なさそうにランボくんを見る

「ごめんね、嫌な思いさせちゃったでしょ?」

「いえ、結さんて怒ると恐いんですね」

「あんまり怒らないからレアだよ?」

いたずらっぽく笑うとランボくんも笑った






20091206

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