「綱吉くん、ちょっと付き合ってよ」

結さんからの突然の言葉

もちろん深い意味はないだろう

買い物だの、散歩だのだ

それにオレは即答した

「いいよ」

ああ、オレってとことん結さんに惚れてるんだなあと自覚する

彼女は荷物を持って、オレを呼んだ

「公園行こう」

「いいけど、こんな時間に?」

時刻は夜9時をまわっている

それでも彼女は行く気らしくて、オレは呆れながら靴を履いた

公園への道のりを、何を話すでもなく歩いていく

そういえば、と思い出す

結さんは京子ちゃんの事を知っていた

彼女には知られたくなかった

同時に改めて自分が違う世界の人間だと思い知らされた

いつかはオレも元の世界に帰るのだろうか

その時彼女はきっと、悲しんだりしない

良かったと微笑むのだろう

「着いたよ」

声を掛けられ、我に返る

「公園に何かあるの?」

「相手してほしいんだ」

そう言って彼女が取り出したのは、バスケットボール

「オレ、運動ダメだから…」

「何も勝負しようってんじゃないよ」

結さんは微笑み、オレにボールを持たせた

「ボールを持ったらやることは?」

彼女は楽しげに聞いてくる

「ええっと、ドリブル…かな」

「はずれ。正解はゴールを見ること」

彼女はオレをゴールに向けさせた

「大事なのは、相手を抜くとか、シュートを決めるとか、そういうのじゃないの。いつでもボールをもらったらシュートを狙うこと」

オレの手からボールを取ると、結さんはオレを挟んでゴールと向き合う

「止めてみなよ」

結さんは微笑み、ボールをキャッチする動作をした

同時にゴールを見て構える

打つ

そう思ってシュートを止めようと飛ぶと、彼女の身がふっと沈んだ

そのままあっと言う間にドリブルでゴールまで行ってしまった

「引っかかった」

オレを見て子供のように笑う

「もう一本」

彼女の言葉に頷く

再び彼女はゴールを見た

引っかかるな

ドリブルを警戒して少し離れる

シュッ

ボールがリングに吸い込まれる

あまりに綺麗な軌道に、動くことも忘れて目を奪われた

「…すごい、すごいね結さん!!」

彼女は苦笑する

「一応スポーツ推薦で大学行くからね」

勉強してないでしょ、と続けボールをしまいながら話す

「今日はね、要は途中はどうあれ、どんなときでも目的を見据えろって話。なんか説教くさいね」

(どうしても伝えたかったの。未来で君が迷ったとき少しでも役に立てばいい)

そして彼女は進路で迷っているのだとも言ってくれた

帰り道、彼女の歩幅に合わせて歩く

「オレ、よくわかんないけどさ。結さんは、――─友達とか親とか関係なく結さんは、どこに行きたいの?それが大事だと思うんだけど」

すると彼女は目を丸くした

やはり偉そうなことを言ってしまっただろうか

「…そうだね。うん、ありがと。もう一回考えてみるよ」

そう言った微笑みに、オレは安心して胸をなで下ろした






20091205

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