「っぁ、あ…!!」
中へそして奥へと進む度に、陸奥の小さな身体からは悲鳴に似た声が上がる。
「一回抜くか?」
心配をして辰馬が問うと、ふるふると頭を横に振り、潤んだ瞳で視線を合わせる。
「止めんで…」
シーツを掴んでいた手を放し、両手を差し出すと辰馬の頬に触れる。
「たつまぁ…わしも愛しちゅうき」
「陸奥…」
「から、続ける…ぜよ」
長年大切に想ってきた女(ヒト)に、愛を囁き返されてしまっては。
「ぁ、ああ…っ!!!」
生々しい音と荒い呼吸音が部屋中に響き渡った。
「…陸奥、」
「ぁ、はぁ…」
「入ったぜよ。よう頑張ったのう」
辰馬の言葉に陸奥は力なく笑みを浮かべた。
「おまんの…部下じゃけぇ…やるときはやるぜよ」
「部下やのうて恋人の間違いじゃ」
「はっ…阿呆が」
「どんなカンジしゆう?」
「…よう分からんが…キスよりも抱き合うよりもおまんを感じる…気がする」
「むっちゃん…やらしーのぉ」
「うっさいモ…ぁあ!!」
ストレートな陸奥の発言に抑えが効かなくなかったらしく、辰馬は突然身体を動かし始めた。
「ひゃ、ぁ、やぁ…!」
「陸奥っ」
「はっ、あ、…ま!」
「そがなこと言われたら、わし、も我慢効かんて!」
「ぁ、あ…!!」
徐々に高鳴る戦慄に両者の呼吸は乱れ、限界も近づいていた。
「たつまぁ、わし、おかしいぜよっ…熱いっ!」
「それで、ええちや」
「何か、あっ…来る…!」
「大丈夫じゃき」
達する迄に遠くはないと思い、辰馬はより一層激しくなる。
「や、ぁ、ああ!!」
「陸奥っ…あいし、ちゅうよ…!」
「わしも、じゃきっ…あ、ああ!!!」
互いの手を握り締めそのまま果てると、陸奥の視界は白くなり意識は遠のいた。
「なんでおまんと入らんといかんのじゃ」
甘い空気は何処へやら。
無愛想な表情の陸奥は、ちゃぷんと湯槽の湯を掬うと辰馬に飛ばす。
「ぶっ…むっちゃん腰立たんろー?からこうやって…ちょっ」
「もう良い!」
ちゃぷんと可愛らしい水音から、バシャバシャとまるでプールか何処かで泳いでいるような水音に変わる。
「お湯っ…お湯減るきに!」
「減るか!!」
「分かったぜよ!お湯やのうて減ったのは腹か!だからイライラしちゅーか!!」
「うまい!けどそんな訳あるかァアア!!!」
「ルームサービスあるきに、上がったら注文するろー」
「(…話噛み合わん……)」
そういえば話が噛み合ったことなど、今迄あったのだろうか。
最近の記憶で会話が成立したといえば。
『陸奥、愛しちゅう』
『わしも…愛しちゅう』
「(…ついさっき、かよ……)」
「陸奥、顔が赤いぜよ?のぼせたがか?」
「っ、黙れクソモジャが!!」
風呂から上がるや否や、銃でもブッ放そうか。
そんな恐ろしいことを企みながら、湯槽に顔を沈めた陸奥だった。
end.2010.4.23...後書