「むーつっ」

「っ、呼ぶな!来るな!!」

「そんなこと言っとったら出来んきに」

「嫌じゃ!!」



陸奥にとって精一杯のガードなのだろう、枕を胸にしっかりと抱えて。


そんなことをしても勿論ガードになり得ないし、寧ろその姿が辰馬には愛らしく見えてしまう。


口元を緩んでしまわないように気を付けながら、辰馬は隣に腰かける。


近づけば近づく程己を擽(クスグ)る香りに触れたくて、まだ少し濡れている栗色の髪に手を伸ばした。



「だから来るなと言っちゅう!!」



勢いのついた枕は辰馬の顔面に容赦なく直撃。


距離が近いため、陸奥は枕の端を掴んだまま繰り返し顔を叩き付ける。



「ちょっ、いた!いたいってむっちゃん!!」

「黙れ毛玉!!」

「いっ…、何かあったんか?」



なんとか陸奥の手首を掴むと、叩いていた手は力なく枕を放す。



「………」

「わしに言ってみ」



陸奥は暫く躊躇していたが、辰馬の視線に耐えきれずおずおずと後ろから何かを取り出す。


手に持っていた物はどの部屋にも同じように設置されている、テレビのリモコン。


それに電源を入れた。



「わしは…わしは…」



陸奥の肩が小刻みに震え、辰馬を思い切り睨み付けながら画面を指差す。



「こがなもん入らんぜよ!!!」


















Special Thanks!
繋がる



















「アハ、アハハハ!大丈夫じゃ!!」

「何が大丈夫じゃ!!!」



付き合ってからもう半年以上経つというのに、頭と部下の恋愛模様はキス止まり。


陸奥の了解をなんとか得て、船では嫌だという彼女を連れてきたホテル。


画面の中で濃密に絡み合っている様子を見て、卑猥な単語をさらりと言ってのける。


流石快援隊一の部下、と言うべきか。



「ちゅーかむっちゃん、なんの番組観てるろー。やらしい」

「おまんのせいじゃ!…こがな場所落ち着かんくて…気紛らわそうとしたら…入っとった」



再び画面に目を向ける。


これからこんな風になるのかと思うと、恥ずかしさや恐怖やらが陸奥を襲う。


辰馬はリモコンを陸奥の手から奪うと、電源を消した。



「むーっちゃん」



戸惑いを隠せない陸奥から、恐怖を少しでも取り除きたくて。


優しく呼び寄せると、そっと小さな身体を抱き締めた。



「わしをみるぜよ。テレビやのうて」

「…辰馬」



経験のない陸奥にとっては未知の世界。


どんなに怒鳴り叩いたりしても、消え入りそうなか細い声は不安の証拠である。



「最初やき、優しくするきに」

「…最初だけか」

「だってむっちゃんじゃき、わしの我慢がきかんくなるかもしれんし」

「やっぱ止め…

「アッハッハ、冗談ぜよ!」




疑いの目でじっと見つめてくる陸奥に、触れるだけのキスをする。



「愛しちゅうよ、陸奥」



サングラスを取り、普段のふざけたような雰囲気は見せずに真顔で言われてしまっては。



「嫌って言うほど愛しちゃるき」


「た─」



陸奥の言葉は呑み込まれてしまい。


そのままゆっくりとベッドに倒れ込んだ。





























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