これ、陸奥に似合いそうじゃ!
こんなひらひらしたの、いつ着るんじゃ
次出かける時に着ればいいぜよ。わし以外の前では着たらあかんのー、アハ、アハハ
…………


あれ陸奥に似とる!色と目が。ちまっこいとこもそっくりじゃき
あれはおまんに似とるのう。特にモジャモジャとしてモジャモジャしとるとこが
アッハッハ!泣いていい?


すみませーん、これ下さい
こちらは婚約指輪という形でよろしいでしょうか?
いいぜよ
いい訳あるかァア!!



それでも手は握られたまま、互いに放そうとしなかった。


普段船内で会話する回数が多くても、それは業務でのこと。


こうして何でもない、くだらないことを話すのが楽しいなんて。


手を繋ぐことがこんなにも温かい、なんて。



















「高っ…建物がきらきら光っちゅう」

「スイートルームじゃき」

「どうしたんじゃ、こがな部屋」

「記念じゃ、記念」



明日の朝に迎えに来るよう連絡を入れて、辰馬は電話を切る。



「辰馬、」

「何じゃ」

「…すまん」



ベランダで腕に顔を伏せながら、小さく呟く。



「…護れなかった。背中を任せられたのは、わし」



様々なことを与えてくれる彼に、自分は何か返すことが出来ているのか。


護ることも、出来なかったのに。



「護れなかったんじゃないぜよ。わしからに当たりにいったんじゃ」



目を見開き、辰馬の言葉に勢い良く振り返る。



「何でそがなことしゆう!!」

「本当の狙いはわしじゃのうて、おまんじゃ」

「…わしが?」

「アッハッハ、もうちくっと早く気づいてたら手を打てたのにのー」



ガウンガウン!!!



「ちょ、むっちゃーん!ここ、スイートルーム!!」



陸奥が懐から愛用の拳銃を抜き、辰馬に向けて発砲した。



「五月蝿い!何で避けないんじゃ!!わしに当たれば良かっ…



言い返せない、言葉を呑まれたから。


辰馬が陸奥の唇を塞ぎ、暫くしてゆっくりと離れた。



「…何言っちゅう。好いたおなごも護れん方が、わしは嫌じゃき」

「………」

「仮に陸奥が当たったとして。そっちの方がおまんの役目果たしとらん。何よりもおまんが無事でいることが、第一条件ぜよ」



抱き締められた腕、感じる温度を、突き放すことは出来なかった。



「陸奥…」

「…た、」



目を合わせたら、後は流れに任せるのみ。



「んっ、ふ…」



最初は角度を変えるだけの口づけが、次第に深くなり、身体の力が抜けて行く。



「はぁ、あ…んっ」



最早支えられなくなった陸奥に、辰馬が背中に腕を回す。



呼吸出来たのは一瞬、直ぐに吸い寄せるように唇は重なる。



「ハァ、…っハァ…」



息苦しくて、酸素を欲しがった時に陸奥は解放された。



「アッハッハ、まだまだじゃの〜」

「はー…」



頭が正常に回転しないが、あの時の言葉が再び脳内を過る。



『陸奥さんは坂本さんに甘いぜよ』


やはり自分は彼に甘いということで。


ひたすら辰馬のことで頭がいっぱいいっぱいなのだ。


それは、今日に限らず。


本日はこれにて終了。



「むーつー!こっちで一緒に寝るぜよー!」

「…(鬱陶しい)」



こんな日はおそらく今日だけ、だが。






























end.2010.4.6...後書
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