「大丈夫か銀時。…すまぬ、無理に乗せたようで」
「いや…何に乗りたいか聞いたの俺だし。予想外の迫力だったっつーか…」
月詠に買ってきて貰った飲み物の口を開ける。
「本当にすまぬ…」
月詠は眉を下げて申し訳なさそうな表情で謝る。
普段とのギャップの為か、銀時は月詠につい見惚れてしまった。
そして、思い出すは友人の言葉。
「(これ…チャンスじゃね?)」
銀時のサディスティックな心に火が点いた。
「なぁ、次したいこと俺が決めてもいいか?」
「もっ勿論じゃ!銀時の意思を優先する」
「キスして」
故意的に月詠の耳元で囁く。
「は!?なな何を言い出すか!!」
「申し訳ないって思ってんだろ〜?」
「思うておるが…人がおろうに」
「だーれも俺達のことなんて気に止めやしねぇよ…月詠」
「銀時…」
銀時に肩を回されては、逃げるにも逃げられなくなる。
いつもなら苦難の1つでも刺してやろうと思うが、今回は自身のせい。
腹を決め、月詠がおずおずと顔を上げて、銀時の唇に己のを重ねようとした。
ヒュルルル、
ズドーン!!!!
何かが空から落ちて来たかと思いきや、
銀時の背後で大きな爆発音が起こる。
「何じゃ!?」
パッと銀時から離れ、もくもくと煙が上がっている音源に気を取られる。
ザワザワと周囲が不安気に見守る中、風で煙が消える。
《大江戸遊園地!マスコットキャラクターによるショー》
「!あれはヅラんとこの…!」
大きな玉に乗り、片手に看板を持ったエリザベスがピエロらしき格好をしている。
「なぁんだ、こういうショーだったのね」
「びっくりしたわ」
ざわめきは次第に収まり、人集りも減っていく。
「あれは人気投票の時の…!この遊園地のマスコットキャラクターだったんじゃな」
感心しながらエリザベスのショーを見ている月詠を見ると、何も言えなくなった。
「(あれはヅラの陰謀だ…。ヅラめ、どこからか見てやがったんだな…)」
「フッ…成功したようだな」
「何がだい?」
「いや、此方の話だ。幾松殿、何か乗りたいものは?」
「アンタに任せるよ。今日は誕生日だろう?」
「あ、あぁ…そうだったな。えーと…」
グー、
「…ぷっ、お腹が減ったのかい?」
小太郎の口より先に喋った音に、幾松は可笑しくて思わず笑う。
「朝早く出掛けた故、そう言えば食べてこなかったかもしれん」
「かもじゃなくてそうでしょ。もう昼だし、先に何か食べてからにしようか」
「あぁ」
「こがなとこで本当にあんのかおい」
遊園地付近の港に船を停め、辰馬と陸奥は外へ出た。
「取引は夕方からじゃき、それまで遊ぶぞ!」
「何を馬鹿な事を言いゆう。阿呆らし。わしは戻る」
「そがなこと言うなちやー!ほれ」
「何じゃ」
「取引先から二枚貰ったんじゃ。閉園まで忙しくて取引出来ない詫びにじゃと。これを無駄にするはダメだぜよー」
「………」
「じゃ、行くぞー!」
「ちょっ、放せ!手を放すんじゃ!!モジャが!!」
半ば強引に連れていかれた陸奥だった。
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