「ねぇ、せんせーは彼女とか居るのー?」

「アハ、アハハ、どうかのー」

「なんか居なさそうにみえて、密かに居そう!」

「例えばー…、あ」

「おー、陸奥!」



ゼミの女子生徒に両側を囲まれている中、辰馬は前方から歩いて此方へ来る人物に向かって手を上げた。


しかし、名前を呼ばれた本人は辰馬を横目で一瞥し、軽く頭を下げただけ。


直ぐに早足で通り過ぎた。



「陸奥先生カンジ悪ー。仲悪いの?同じゼミなのに」

「陸奥はああいう性格ぜよ。感じが悪い訳のと違う」



ゼミの女子生徒の質問に答えながら、辰馬は陸奥の背中を目で送った。





















Special Thanks!
秘密と約束





















「ただいま」



辰馬がリビングの戸を開けると、机いっぱいにプリントを広げ、黙々と作業する彼女が居た。



「ただい



帰りを告げる声が聞こえなかったのかと思い、今度は近距離で言おうとしたが。


その前に、タイを引っ張られた。



「聞こえとったんか」

「当たり前じゃ。こがな距離で聞こえん方が可笑しい。それより、」



陸奥がさらに強く引くと、辰馬の首元が絞まる。



「ちょっ…苦し…何じゃ、陸奥」

「誰じゃ」

「は?」

「昼間の。おまんの隣に居った女」



唇を尖らせて、辰馬を見上げて睨む二つの眼。


鋭い視線に返事に戸惑ったが、直ぐには笑みを溢さざるを得ない。



「何笑っちゅう!わしは真剣に

「真剣に焼きもち妬いたんか?」

「は?」

「だから、わしとゼミ生が一緒に歩いとったの見て、妬いた。違うか?」



陸奥はタイを握っていた手を振りほどき、辰馬との距離をとる。



「違う!わしはただ誰かって聞いただけじゃ!おまんに焼く、もちはないちや!!」



辰馬に背を向けて腕を組む。


硝子越しに映る景色が、自然と目に入った。



「むーっちゃん」



くすりとほくそ笑めば、辰馬は背後から陸奥を抱きすくめた。



「大丈夫じゃき。わしは陸奥しか見えとらん」

「……」

「こうやって抱き締めたいと思うのも」



陸奥に回されていた腕に、更に力が入る。


そしてそれが緩まったかと思えば、陸奥は肩を掴まれ、鏡越しでなく辰馬を直接見える体制になった。



「んっ…」



顎を掬われ、重なり合った唇。


陸奥は小さな吐息を漏らした。



「ちゅーしたいって思うんも、おまんだけじゃ」






























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