「陸奥さん」

「陸奥さん!」

「坂本さん、陸奥さんは何処にいてますか?」



部下達は只、陸奥を尊敬しているだけ。


決して恋愛対象としてみている訳ではないと、心の何処かでは分かっている。


しかし、最早限界も間近らしく。



「(…好いちゅうきに)」



陸奥の口からも、愛を囁いてもらわなければ満たされない。

















「ちょっ…離せ!」



社長室へ赴けば、与えられたのは資料ではなく突然の抱擁。



「むっちゃん」

「むっちゃん呼ぶな!気色悪い!!」

「さっきまで何しちょった?」

「おまんに言われた通りに取引先に

「他も連れてったんか?」



抱き締める力は強くなる一方で、緩める気配はない。


このまま質問に答えれば、解放してくれるのだろうか。


それを期待して、取り敢えず陸奥は大人しく様子を伺うことにした。



「それで?」

「…取引は成立した。から契約書を預かって来たぜよ」

「後は?」

「そこから真っ直ぐ此処に来た」

「陸奥、分かっちゅうか?」



陸奥の肩に乗せられた癖のある頭は、何故か小さく感じた。



「何が」

「皆、皆、おまんを好いちゅう」

「おまんも好かれとるじゃろ」



だから鈍感という種は厄介なのだ。


辰馬は大きく溜め息を吐いた。



「何溜め息吐いちゅう。ウザい」



意味も分からず抱き締められた陸奥も、次第に苛立ちを覚える。



「そろそろ離さんか。おまんにばかり構っとれん」

「陸奥、愛しちゅう」



耳許で囁かれた甘ったるい言の葉。


ここまでしなければ分からないと悟った辰馬は先手に出る。


陸奥は思わず息を呑んだ。



「陸奥は」

「な、何が」

「わしんこと好きがや?」

「そがなこと言わんでも

「むっちゃんの口から言わんと分からんろー」



早く、早く。


早く言って欲しい。


そうでないと、次々に濁った感情が溢れでてしまうのだ。


































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