17

 

「月詠早く!幾松さんが行っちゃうよ!!」

「今行く!」


あの夜から数日後。

桂が幾松との結婚を申し出た。

答えは言わずとも。

プロポーズされた幾松の瞳からは涙が零れた。

今日は幾松が吉原を出る日。


「幾松さん!あたいのこと…忘れないでね!!」

「勿論だよ。また遊びに来る」

「っ、幾松さあぁん!!!」


店の前で彼女を囲み、それぞれ別れを惜しんでいた。


「月詠、」

「幾松…。幸せにな」

「あぁ。…月詠、お前は不器用過ぎるんだよ」


あの日のことを言っているのだろうか。

それでも幾松の意図することが分からなかった。


「不器用?」

「そうさ。なんせここは吉原。無理もない。けどね、素直に伝えてごらん。きっと伝わるから」

「幾松殿、そろそろ」

「そうだね。じゃあね、月詠。アンタも幸せになるんだよ」

幾松は優しく微笑み、吉原を去った。





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