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「せ、先生!」

「ん?何じゃ」


沖田君がドアを閉めて数秒後、月詠先生の方に振り返る。


「今の言い方…私が喜ぶって…!」

「違うのか?」

「違くは、ない、ですけど…ってそーゆー問題ではなくって、まるで」

「まるで?」


次の言葉を言いかけて、私は気がついた。

月詠先生が微笑んでいることに。


「…いえ。何も……」

「フフッ」


悔しい。

月詠先生は何でも見透かしているような気がして、これ以上言っても墓穴を掘ってしまう。

私は再びポスターに視線を落とした。


「…フフッ、意地悪をしてしまったかのう」

「…いえ。大丈夫です。…何も聞かないんですか」

「何も?」

「私が沖田君のこと……先生気づいているから、あんな事言ったんですよね」

「ぬしらを見ていると、もどかしくてな。ちょっと茶々を入れなんした。だが、」


先生の視線を感じて、顔を上げる。


「話したくなれば、自ずと話し始める。聴いてほしくなる。それは

「ツッキーツッキー!居るアルか!さっきクラスでこんなでっかい虫いたネ!」


息を弾ませながら、保健室に飛び込んできた神楽ちゃん。

「神楽。寒いから閉めなんし」


いつもと変わらない表情で、先生は続けた。


「空。こんな時にありんす」



 

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