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声が二重になって聞こえた。
月詠は下を向いたままだった顔を上げて、正面を見る。
「ぬし…何故ここにいる?」
「ババアが直接会うまで家に入れねーって。言われて」
月詠は目を見開いたまま、瞬きもせず銀八を呆然と見つめる。
「ぷっ、すげー顔」
「だからさっきも言った通りこれはぬしのせいで…!」
銀八は月詠の右腕を引き、自分の身体へと引き寄せる。
「全部俺のせいで良いから。今はこうさせてくんねェ?」
「…銀八……」
懐かしい香りに包まれて、月詠はゆっくりと目を閉じる。
流れた滴が頬を伝う前に、自分を抱き締めた身体にそっと腕を回した。
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