Forth day

 
 
何がいけなかったのだろう。

もう3月だから、と油断して布団をかけずに寝たことか。

それとも昨日夜遅くまで飲み歩いていたからなのか。


「…いや、ぜってー……罰(バチ)だ、これ」


頭が痛くて、身体が気怠い。


「ゲホッ、ゲホッ…はー…完璧風邪だな…」


足元に落ちている毛布をかき集めて、くるまる。

全く思考が働かない。


「……先輩、」


ここは普通彼女に会いたくなるところだが。

瞼の裏に映るのは、月詠先輩の顔。


「……先輩、ごめんね」


昨日、キスをした後耳元で何度も囁いた。


『先輩…好き、好きだよ、大好き、』


その時に先輩がどんな顔をしていたかは知らない。


「あー、何やっちゃってんの俺!…ゲホッゲホッ…頭痛い」


視界が次第にぼやけるともに、眠気が襲ってくる。

そのまま意識を手放した。



「……ん…?」


鼻を擽る、いい匂い。

台所へ視線を移すと、人影があった。


「冷た…」


自分の額には、冷えピタ。


「起きたか、体調はどうじゃ?」

「…なんで、先輩、ここに…」

「玄関が開いておった。ぬしこそ、昨日はあんなにピンピンしておったのに、何故今日こんなことになっておる」

「……罰?」

「…戯けが」


台所へ戻ると、先輩はそれを器に盛って運んできた。


「…うまそ」

「雑炊なら、食べられるか?」

「先輩、料理上手いんスね」

「…じゃあ、わっちはこれで。今日わっちが来たのは、」


目の前に差し出されたのは、家の鍵。


「え…これ先輩の」

「ぬしが忘れてったんじゃ!」

「…あー…普段俺、鍵かけないから」

「ちゃんと鍵くらいかけなんし」


立ち上がる月詠先輩の腕を掴む。

先輩の驚いた顔が見えた。


「何じゃ、」

「…先輩、…好き」

「っ、」

「大好き」

「…、」


今日は顔が見えた。

驚いているのと、少し戸惑っているのが。


「まだ、いてよ…俺が寝るまで」


掴んだ手首を放す。


「……早く寝なんし」


月詠先輩は、寝るまで居てくれるらしいので。


「まずは雑炊、いただきますねー」


なるべく時間を稼ごう。

そうすれば、先輩と居る時間が長くなるから。



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