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咳払いをし、月詠は椅子に座り直す。

床に落ちた自身の成績表を拾い、ボロボロになった身体を起こしながら銀八も座る。


「どこの大学へ行こうとそれはぬしが決めたこと。しかし、わっちと同じとなればこれでは厳しいぞ」

「わぁってるよ〜…」

「勉強しなんし。それ以外何も言えぬ」

「つってもさ〜何したら良いか分かんねぇよ」


月詠は銀八の成績表を見る。


「見たところ国語はずば抜けて良いの。なら英語と数学を教える。力不足かもしれぬがぬしよりはマシじゃろ。暗記科目は暗記だけじゃ。それは自分でどうにかしなんし」

「え、おめーが教えてくれんの?」

「嫌か」

「まさか」


銀八はにやにやと笑みを浮かべる。


「こーんな美人な彼女に教えてもらえるなんて嫌な奴なんていねーよ」


一瞬目を見開いたが直ぐに呆れたと言わんばかりの視線に変わり、吐息をつく。


「わっちも…一緒に行きたい…んじゃ」


語尾が次第に小さくなっていく。

普段意地っ張りな彼女の口から出た素直な気持ち。

窓の外を見たまま銀八と目を合わせようとしない。

愛しさが一気に込み上げてくる。


「つーくー!!!」

「はっ離せ!戯け!!」

「銀さん本気モードかも」

「…そうでないと困る」


銀八は抱きついたままで、特に月詠も抵抗をしない。

お盆は過ぎ、秋の足音が聞こえそうな涼しい日だった。




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