12

 
 
自分と銀八の勤務先、春から勤める学校は、想像していたよりも遠かった。

車で30分とかならまだしも、電車で半日以上はかかる。

一緒に暮らす、という夢は崩れ落ちた。


「…まー、分かってたといえば、分かってたけどな。都合良くはならないって」

「………」

「でも3年したら、勤務先変更の希望出せるじゃん?」

「………か」

「え?」

「…また、わっちはぬしと離れなくてはいけないのか」

「つく…」


過去の自分と重なった。

4年前、地元に残る銀八から離れて、大学へ進学した時と。


「…また、わっちは、我慢しなくてはならないのか…!」

「あん時とはちげーだろーが。連絡も遠慮する必要ねーし、電話だって」

「わっちは!また…寂しい想いと戦わねばならぬのか?」

「……っ」


銀八は口を噤んだ。


「わっちは…寂しい想いをするくらいなら…銀八を考えずに生きたい…」

「……」

「我慢など…出来ぬ程に…わっちは弱くなりんした…」

「…それが月詠の気持ちか?」

「………」


何も言えなかった。

次々に出てくる涙が邪魔をして。


「……分かった。今までありがとうな。…月詠、


頭をぽんっと撫でると、遠退いていく温もり。


『愛してる』


それはまるで、呪縛。

耳元に響いた言葉が、何時までも反芻していた。




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