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『二十四日、何処か行きませんかィ?』
素直で、純粋で(時々、いや、ほぼ毎日腹黒い発言もするが)。
何より己にいつも笑いかけてくれる後輩。
正直、社内で一番可愛がっているかもしれない。
「……」
月詠はソファーに置いてある鞄から携帯電話を取り出した。
「月詠先輩、おはよーございます」
「…あぁ。お早う」
ベビーフェイスの後輩は月詠が来るなりまじまじと眺めた。
「?…何か可笑しいか?」
「いやぁ、普段の月詠先輩は格好良いのに、今日はなんとなく違った雰囲気で。可愛らしいでさァ」
「全く…そんなお世辞、何処で覚えたのか」
「えー、お世辞じゃありやせんよ」
クスクスと笑う月詠に、頬を膨らました後輩も思わず笑みを溢す。
「やっと笑ってくれやした」
「…え?」
「先輩、最近元気なさそうだったんでねィ…。どうしたのかなーって」
だてに一緒に仕事してる訳じゃないんさァ。
そう付け足した。
「……!」
「だから、今日はいっぱい笑える所に行きやす」
彼はまた純粋に笑みを見せた。
「…ああ。そうじゃな」
後輩に見透かされていたのかと思うと、困ったような笑みしか浮かべられなかった。
それでも彼の行為は嬉しくて。
今日一日を楽しもうと月詠は決心した。
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