春先のすれ違い
──ウザい。
月詠にまとわりついている、物の全てが。
「月詠はさ、最近何もねぇの?」
「最近?」
入学してからまだ日は浅いというのに、月詠という存在は広まり始めていた。
入試でトップ合格は、式で挨拶をする。
多分、それが原因。
「入学当初、ヤバかっただろ。先輩やらタメやら月詠狙ってたじゃん。告白の嵐で」
「…あ、…そのことか」
そのことかって。
俺がどんだけ焦ったと思ってんだよ。
銀時は言いかけた台詞を紡ぐ。
「まさに鉄壁。片っ端から振ったよな」
銀時の心配を他所に、月詠は誰かに靡くことをしなかった。
「顔も名前も知らない人に急に言われても、付き合う気になれぬ」
「へー」
──じゃあ、顔も名前も知ってる、俺は?
「ぬしこそどうなんじゃ。急に言われて、好きでもない奴と付き合えるのか」
「無理」
「ほらみなん「だって俺、好きな子いるし。…スゲェ好き」
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不意に出てきた言葉。
でも、絶対、コイツには伝わらない。
そんな顔をしていたから。
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