片隅の想い
「フー……」
閉じ込められた吉原の空を見上げても、夜さえ感じられない。
この風景に飽き飽きする。
「嫌だわぁ、もう」
「わっちのこと、買ってくれなんし?」
マヤカシ、泡沫、夢うつつ。
彼方此方飛び交う遊女の声に、耳を塞ぎたくなる。
真実は、ない。
「………」
全て諦めたつもりだった。
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「真は本当に、ありんせんか?」
そう呟いた、現(ウツツ)にしがみついている自分に、自嘲の笑みが溢れた。
11/05/22
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