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バタン、
社長室の扉が閉まったところで、掴んでいた手がやっと離れた。
「どうかしたんか…?」
「陸奥はわしに言ってくれないのう」
「?何を」
「“好き”を。おまん自身から」
「はぁ!?」
予想外の事に、陸奥は眉をひそめた。
「いきなり何言っちゅう。くだらん」
「昼間に部下に言っとった」
「昼間?」
目を瞑り、記憶を辿る。
しかし、いくら記憶辿っても、思い当たる節は無い。
第一、その二文字を部下に軽々しく言ったりするのだろうか。
「わしは言っとら
目を開けたのとほぼ同時。
辰馬が陸奥に覆い被さり、二人で茶色の客用長椅子に倒れ込んだ。
「っ、おい!重い…退けろ」
「退かん。陸奥が言うまで」
何時もと違う雰囲気に、一瞬戸惑いを覚える。
しかし、陸奥はきつく唇を噛み締め、困惑を振り払うように言い放った。
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