4

 
「お帰り」

「…ただいま」


口元を上げて笑みを浮かべる仕草はもう当たり前。

幼馴染みだから。

そう言って、こうして家に勝手に上がっているのも。


「どうだったんだ?」

「何がじゃ」

「学校」

「別に…」

「虐められたりしてんじゃねェのか」

「それはありん


ローファーを脱ぎ、玄関へ上がった瞬間手首を掴まれそのまま引かれる。

痛い程強かったが、相手は何とも思わないのだろう。


「ちょ、晋助…!苦しっ…離せ、」


幼馴染みに抱きすくめられた。


「放したらお前は何処かに居なくなる」

「……」

「痛むんだよ。左目」

「……」

「治まるまでこうしたままで良いよなァ?」

「…あぁ」


胸の中で小さく息を吐くと、晋助は頬を寄せながらさらに腕に力を込めた。


──痛むのは、本当に左目?


晋助の左目は、言いつけを破った自分が傷を負わせてしまった。

しかし、左頬の自身の傷は晋助のせいではないのに。

彼はいつまでも己を責め続けている。

捕らわれているのだ、晋助も、自分も。



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