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「お帰り」
「…ただいま」
口元を上げて笑みを浮かべる仕草はもう当たり前。
幼馴染みだから。
そう言って、こうして家に勝手に上がっているのも。
「どうだったんだ?」
「何がじゃ」
「学校」
「別に…」
「虐められたりしてんじゃねェのか」
「それはありん
ローファーを脱ぎ、玄関へ上がった瞬間手首を掴まれそのまま引かれる。
痛い程強かったが、相手は何とも思わないのだろう。
「ちょ、晋助…!苦しっ…離せ、」
幼馴染みに抱きすくめられた。
「放したらお前は何処かに居なくなる」
「……」
「痛むんだよ。左目」
「……」
「治まるまでこうしたままで良いよなァ?」
「…あぁ」
胸の中で小さく息を吐くと、晋助は頬を寄せながらさらに腕に力を込めた。
──痛むのは、本当に左目?
晋助の左目は、言いつけを破った自分が傷を負わせてしまった。
しかし、左頬の自身の傷は晋助のせいではないのに。
彼はいつまでも己を責め続けている。
捕らわれているのだ、晋助も、自分も。
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