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「ね、月詠!あの人すごくかっこ良くない?」
「んー…」
「ほら、校門に立ってる風紀委員の」
「あぁ…」
「あれでマヨラーなんだってよ?見えなくない?」
「そうじゃな……った!」
ノートから眼を放し顔を上げると、不満気に唇を尖らせている友人の顔。
薄くもない無理矢理丸められた教科書を手に持っている。
それで自分の頭を叩いたのは明らかだった。
「何じゃ、いきなり」
「話聞いてた?」
「マヨラーが立ってる、だろう?」
「そうじゃなくて…いや、合ってるんだけどさ」
元の形を戻し始めた教科書を机に置き、盛大な溜め息を吐かれる。
そんな態度をとられても、合っていないなら首を傾げることしか出来ない。
「何か間違っていたか?」
「月詠ってさ。恋愛トークになると一気に耳遠くならない?」
「……別に変わりありんせん」
「変わるから言ってるんでしょー!あ、それってもしかして…」
身を乗り出した彼女は、口元を自分の耳へ近づける。
つまり、内緒話をするには完璧な体勢が作られた。
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