*あなたの顔
なぜこんなことになったのか。
必死に頭を回転させるが身に覚えがない。
今自分に覆い被さっているのは新開で、鋭い表情から察するに完全にスイッチが入ってしまっている。
「名前」
名前を呼ぶ声音も艶やかだ。それだけで体が疼くほどに。
「隼人、ちょっと落ち着いて…?」
「落ち着けるかよ」
腹を撫でる手は優しいが、切羽詰まっているのは明らかだ。
本当になぜこんなことになったのか。
今日は朝練がなかった。
いや、そもそも期末考査最終日の今日は放課後から再開する部活を楽しみにしていた。
鞄を持って部室へ行こうとしたら廊下で待っていた新開に呼び止められて、この人気のない準備室に連れて来られた。
「ん…隼人、やめ…」
「やめらんねぇよ。どんだけ我慢させるんだよ」
制服がめくりあげられ胸の谷間が露わになる。
新開は舌を這わせながら胸を揉みしだく。空いた手が内腿をなぞる感触に名前の腰が浮く。
「どれだけシてないと思う?」
「は?」
「レース前はダメって言われて優勝してみたら名前の生理で、そのまま期末で…たまりまくってるんだけど」
「ちょっと、待って、隼人」
「待つ?こんななのに?」
内腿から足の根元へ移動してきた指は名前の濡れたそこへ侵入していく。
見上げると青い瞳は今にも達しそうに見える。
自分の感じる姿に興奮されているのがわかってしまう。
口から漏れた嬌声は理性の糸が切れた音だ。
「1回で済むと思うなよ?どれだけ抱きたかったか思い知ってもらうからな」
***
「信じられない。3回も…」
「名前はもっとイッてたけどな」
「それは隼人が……もういい」
とても満足そうな微笑みを前に名前の抗議は無力だ。
新開に呼び止められたあの瞬間、こうなるだろうことは心のどこかで予想していた。しかし黙ってついてきたのだ。抵抗など形だけだ。新開もきっとわかっているに違いない。
「自分で抜けばいいのに」
最後の悪あがきのつもりでからかおうと思った。
「名前はたまに言葉がえげつないな」
「男子寮なんだから色々回ってくるでしょう?」
「たしかに回ってくるけどな。生身の名前以上に興奮するものなんてないだろ」
何でもないことのようにサラリと言ってのけた。
まだ動けない名前の代わりに甲斐甲斐しく新開が乱れた服を整えてくれる。
今の一言が名前の心をざわつかせたことなどわかっていないのだろう。
「……隼人」
「ん?」
新開が手を止める。
「もう1回」
「は」
「もう1回して」
「ちょ待っ…」
制止も聞かずに唇を奪う。
先ほどまで何度も味わったはずのキスはそれでもやはり甘い。
煽るつもりで触れたそこはすでに硬くなっていて、新開は悔しそうに眉を寄せている。なのに口元は緩んで笑っているような何とも言えない顔だ。
「そんな可愛くおねだりされて平気なわけないだろ」
今日の部活は遅刻だ。
2人が揃って遅刻するのだ。理由もすぐバレるだろうが構わない。
どれだけ抱きたかったか思い知ってもらうと言われた。だがそれはこちらも同じなのだ。
彼に抱かれるのが好きだ。啼かされている間は幸福感しかない。それをたっぷり自覚してもらうまでは彼の手も足も自分だけのものにしたいと言ったら、今度はどんな顔が見られるだろうか?
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