復讐のCampanella | ナノ









「ほら可憐ちゃん、これなんてどうかな?」


「ちょっと…、そんなピンクのヒラヒラなんてむしろどこから見つけて来たんですか」

「えー、せっかくこれ着けてご奉仕してもらおうかと思ったのに」

「え、何考えてるんですか?ちょっと一発殴っても良いですか?」


「じゃぁ、これは〜?」




ただいま私は折原さん、いや、臨也さんと共に新宿のデパートに買い物に来ている。


今は何故かエプロンを選ぶことになっている。





「ちょ、ちょっと臨也さん!それはいい加減にしてください」


「え〜、駄目ぇ?」

「どこの風俗の人ですか!」


「もうさ、可憐ちゃんが一緒に居たらなかなか決まらないからちょっとそこのカフェで休んでてよ」

「は?え?いやいや、臨也さんが悪いですよね。しかも臨也さんに任せたら怖いですよ」


「大丈夫大丈夫、今までのは半分冗談だから」

「半分って、半分本気じゃないですかぁぁぁ!」




良いから良いから、と背中を押されてしまえばしょうがなくお店の目の前のカフェに入る。

ここからじゃ臨也さんが見えない。


さっきから選んでいたものを考えると怖い。本当に怖い。

まぁ、別にあまりに変な物を買って来るようなのであれば着けたければ良いだけの話しか。



そんな事を考えながらも、どんなものを選ぶのか少し楽しみにしている反面もある。




「……馬鹿みたい、私」


















《はい、これ君のだよね?》



《これは君と俺の秘密ね》



《これも何かの縁だから、仲良くしようねぇ》















これもきっとまやかしなのだ。

彼の暇潰し。
ただ私が誰なのか、何の目的なのか知りたいだけの茶番劇。




私はもう…………。

生まれ変わったんだ。






















「可憐ちゃん?随分眉間に皺よってるけど、大丈夫?」



気がつけば目の前には臨也さんの顔があり、反射的に声をあげてしまう。




「もう、驚かさないでください!」


「ほら、行くよ」

「え、ちょ、ちょっと…!」





テーブルに乗せていた手を引かれ、無理矢理立たされカフェを後にする。

先払い式のカフェだったため、店を出ようとすれば店員さんに笑顔でありがとうございました、と言われる。




「ちょっと、臨也さん!手!」


「あぁ、」



手を離せ、という意味で言ったにも関わらず、何故か逆にぎっしりと恋人繋ぎをされてしまう。

突然のことに頭が追い付かず、ドキンと胸が弾む。



「い、臨也さん…っ!」


「恋人同士でしょ?一応」



そうケラケラ笑う臨也さんを睨むが効果はなかった。






本当にこの人は何を考えているのだろうか。
















♂♀




新宿のマンションに帰宅すれば、時計の針はすでに7の数字を回っており、どうにもお腹が空くわけだと思った。




「可憐ちゃーん、お腹減った。死にそう」


「じゃぁ、どうぞ。そのまま逝ってください」

「冷たいよね。ちょっとあまりにも冷たすぎだよね。それが彼氏に対する態度なの?」


「まぁ、彼氏というポジションかもしれませんが、私は別に臨也さんのことが好きなわけじゃありませんから」




ふーん、と不機嫌そうに返事をすれば、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる、



「え、何ですか…」



気づけばあっという間に二人の間には距離が殆どなく、臨也さんの手が頬に触れる。

ぐんと顔が近付いてくるのを見て、肩を強く押す。


そこには目を見開く臨也さんが居た。




「………………」

「何で無言なんですか。て言うかちょっと、突然なんなんですか」


「キスしようとしただけだけど」

「さも当たり前かのように言わないでください!」



「駄目なの?」

「駄目なの?じゃありません!駄目です、もう駄目駄目です!!」

「ケチ」

「ケチじゃありません!」




そう言い切れば、拗ねてしまったのかソファまで戻りどよーんという音が聞こえてくるかのような背中をこちらに見せていた。




「………………」

「………………」

「………臨也さーん」

「………………」




完全に無視を決め込んだようだ。


しょうがないので彼の隣に腰をかける。

そうすれば当て付けかのようにわざとらしく首を私とは反対方向に向ける。





「臨也さーん、何食べたいですか?」

「………………」

「今なら特別大サービスで臨也さんの食べたい物を作ってあげますよ」

「………っ!」


「三秒以内に言ってくれなきゃもう知りませーん。良いですか?さーん、にー「オムライス」




そっぽを向きながらそう告げる臨也さんが可笑しくて、声を上げて笑えば睨まれてしまう。




「ご、ごめんなさいっ!だ、だって…!」




睨まれても可笑しいものは可笑しくて、笑い続けていれば、グイっと強い力で腕を引かれる。


急なことに咄嗟の判断が出来ず、そのまま臨也さんの方に身体が傾けば、頬に柔らかい感触が広がる。

頬にキスをされたと気づくまでには時間がかからなかった。




「!」

「とりあえずこれで機嫌を戻してあげるよ。だから美味しいオムライス早く作ってきてよ」



してやったり顔の臨也さんを今度は私が睨むが、クスクス笑われてしまうだけだった。





「あ、そうすれば、折角だからこのエプロン着てみてよ」



そう手渡された袋。



「え、」


「何、その露骨な嫌な顔」

「だって臨也さん選んでたやつはろくなのが無かったじゃないですか」


「失礼すぎだよ、君。良いから文句は見てから言いなよ」




渋々袋を開けてエプロンを出してみれば、そこには可愛らしすぎず、シンプルすぎないオレンジ色のエプロンが顔を出した。

裾の方には小さな花があしらわれており、これには趣味が良いと言わざるをおえなくなってしまった。



「可愛いですね、これ。色も素敵です」


「でしょ?だから言ったでしょ、俺は趣味が良いって。ちなみにその色は俺から見ての君のイメージカラーかな」

「私の、イメージカラー?」


「そう。可憐ちゃんって何だか晴れが似合うっていうか、太陽みたいだなぁと思ってね」

「……太陽、ですか」







太陽、私は正反対だ。


私はね、もう闇の中で生きていくと決めたのだから。
















...to be continued



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つかの間の幸せを目指しました。

臨也さんとのやり取り楽しいです。
やりたい放題です←

ちょいちょい主ちゃんの過去を出しています。
いつ頃過去話ししようか迷っているのが本音。

まずこの連載は需要があるのかしら…ww
不安だぁぁぁぁぁぁ。



2012/4/18