復讐のCampanella | ナノ
「……んっ、はい、もしもし」
携帯の電話で起こされるのはこれで四日目。
『もしもーし、可憐ちゃん?おはよう。とりあえず着替えていつもの所に来てねー。早めに来てねぇ』
「ちょっと、折原さ…」
毎朝毎朝何なんですか、そう言おうとすれば既に携帯からは通信が切断された機械音が聞こえる。
しかし電話を切られて以上、準備をするべくベッドから重い身体を起こす。
♂♀
「おっはよー、相変わらず不機嫌な可憐ちゃん」
「折原さんは相変わらずテンションが高くて不愉快です」
「そんなに俺に会いたかったかー」
「ちゃんと私の話し聞いてます?」
「ううん!聞いてない」
じゃぁ、行こうか、と初めて呼び出しされた時に入った喫茶店に入って行く折原さんの後をついて行く。
ここ数時間、なぜだか折原さんに呼ばれればこうして喫茶店に入りたわいもない会話をする。
きっと彼なりの私の探りなのだろう。
「君はいつもので良いんだよねぇ?」
「はい」
店員にミルクティーとコーヒーを頼めばこちらへ向き直る。
「ところで、折原さん、」
「何?」
「私のことは何か判りましたか?」
じーっと真剣な顔で目を見つめてきたと思えば、ふっ、と笑う。
「全く、この俺がお手上げだよねぇ。だからこうして直接会えば何か判るかな?とか思ってはいるけど、君は口を滑らなそうだし」
「折原さんがお手上げだなんて、嬉しいですね」
「うん、口を滑らそうか」
「お断りしますね」
「はぁ、一條可憐なんて調べても調べても何も出てこない。まるで存在していないかのように。まさか幽霊?」
折原さんという人が幽霊、だなんて言うものだから思わず吹き出してしまう。
「幽霊なんか信じてるんですか?」
「まぁね。幽霊に近いものが知り合いに居るからねぇ」
「へー」
「興味ないんだ?」
「別に聞いたって教えてくれないでしょ?」
「ご名答!」
気がつけば店員さんが飲み物を運んできて話が中断される。
「…可憐ちゃんの目的は何?」
「さぁ、なんでしょうかね。気になりますか?」
「正直、君には興味津々だよ。それに俺は君の名前、可憐って名前を聞いたことがある」
「!」
「おっと、反応を示したね」
まさか、私の名前に覚えがあるだなんて言われるとは思ってはいなかった。
「でも、折原さんには判りませんよ。絶対に」
「ふーん。…じゃぁさ、良いこと思いついた」
そう言った折原さんの顔はひどく愉快に笑っていた。
少し不気味なほどに…。
「俺と恋人ごっこをしようか」
♂♀
「可憐…?」
「え、あぁ、ごめん…っ」
気がつけば部屋は真っ暗で、今日会う約束をしていたシズが部屋にやってきてこんなに時間が経っていたことに気がつく。
「考え事、か?」
「うん、えーっと、ちょっとね。……明日から仕事が入ったの」
「探偵の、か」
「そうそう。だからしばらくは会えないかな」
「そうか」
シズには私の職業は探偵、と言っている。
が、本当は私も情報屋紛いのことをしている。
過去を全て捨て、復讐するためにこうしてこの地に帰って来たんだ。
シズに出会ったのは偶然。
しかし私はシズのことを昔から知っていたのだ。
「仕事、気をつけろよ」
「うん、大丈夫」
まさか明日から折原臨也の元に行くだなんて口が裂けても言えるわけがない。
《俺と恋人ごっこをしようか》
《は?》
《俺は君の名前に引っ掛かりがある。だけど調べれば調べるほど君が判らない》
《そこからなんで恋人ごっこが出てくるんですか…?》
《可憐ちゃんは俺のことが知りたいんだよね。だから近付いて来たんでしょう?なら、利害の一致じゃないの?恋人ごっこして近くに居ればお互い何か出てくるかもしれない》
《………………》
《悩むならやってみよう!明日から俺のマンションにおいでよ。…まぁ、単純に君に興味があるんだよねぇ》
彼に近付けば何か弱味が手に入るかもしれない。
私は頷くことしか出来なかった。
この選択が間違いだったとは、この時には気付く術もない。
...to be continued
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臨也と恋人ごっこ(?)をすることになった夢主。
臨也の記憶に残る夢主の名前とは?
そして夢主の復讐の訳とは?
夢主の過去とは何か…?
臨也と接近だーいっ!
精一杯夢小説っぽくするぞ!
2012/4/8
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