復讐のCampanella | ナノ









けたたましい携帯の音で目が覚める。



「……ん、うるさいなぁ」




布団から手を伸ばせば何も着ていない素肌が晒され少し肌寒い。

携帯を掴み画面を見れば、そこには"非通知着信"の文字。
頭が一気に覚醒する。




「はい、もしもし」


『あれぇ、寝起きかな?悪いことしちゃったねぇ、ごめんごめん。とりあえず今から池袋の駅前の喫茶店で会えるかなぁ。うん、とりあえず君に拒否権はないからよろしく』



用件を一気に捲し立てられ、自分の伝えたいことを言い終わったのかすぐに切られてしまう。

声の主は折原臨也だった。




「ほらね、やっぱり貴方は電話をかけたくなったでしょ」




クスリと笑いながら時計を見ればAM6:00の標示。



「……嫌がらせ、ね」




しょうがないのでベッドから起き上がり、シャワーを浴びようとリビングに行けばテーブルの上には小さなメモが一枚。





― 今日は仕事早いからもう帰るな。

また連絡する。 ―




少し汚い字で書きなぐられているその文字はシズの性格が出ているようで、笑みが溢れる。

しかしこれから会う人物のことを考えれば、顔を引き締めた。


















♂♀



池袋駅前。

まだ早朝なので人も少ない。
遠目でもすぐにわかる黒いファーコートを着ている怪しい男。


喫茶店に入れば、こちらに気がついたのか胡散臭い笑みを浮かべながら手を振っている。




「随分朝早くからそんなに私に会いたかったんですか?折原さん」


「あれぇ、そんなに朝早くに起こされたのが腹立たしいのかな?それとも良いところお邪魔しちゃった?奏多ちゃん…んー、可憐ちゃんって呼んだ方が良いのかな?」




嫌味に嫌味にで返す臨也。

やはり彼を言葉で負かすなんて無理があるのだ。




「で、とりあえず本題に入るけど。君は一体何者なのかな?」




テーブルに肘をつき頬杖をつきながらこちらを見つめる臨也。





「可憐ですよ、一條可憐。21歳。ちなみに現役女子大生ではないのであしからず」


「ちなみに今のはどこまでが嘘かなぁ?」

「さぁ、どこまででしょうか」

「食えない奴だねぇ」


「折原さんにそう言っていただけるなんて光栄ですね」





小さく舌打ちをする臨也は店員にコーヒーとミルクティーを一つずつ頼む。




「あれ?もしかしてミルクティーって私に頼んでくれました?」


「嫌なら自分で他のを頼みなよ」

「いえ、むしろミルクティーが好きなのでよくわかったな、って」


「君、カラオケルームでミルクティーを頼んでたでしょ」

「あぁ…!ありがとうございます」




素直にお礼を言えば、鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をする彼。




「なんですか…?」


「いや、君、お礼言えるんだ」

「ちょっと、人をなんだと思ってるんですか!」




そんなことを言い合っている内に頼んだ飲み物がテーブルへ運ばれてくる。




「美味しいよ、ここのミルクティー」


「へー、折原さんがそんなこと知ってるのって意外ですね」

「君も人をなんだと思ってるんだよ」





そこからは特にお互い何も話はしなかった。

ただ温かい飲み物を飲んでいるだけ。


きっと彼は探っている。
私の存在を、正体を。




無言の時間を過ごしていればいつの間にかカップの中は空になっており、時間が経ったことに気がつく。



「出ようか」



そんな彼の一言に頷けば、さも当たり前かのように会計の伝票を持って行ってしまう。




「折原さん、おいくらですか?」


「良いよ。俺が誘ったんだからここは持つよ」

「悪いですから、」

「良いから黙って外で待ってなよ」



背中をぐいっと扉の方へ押される。

意外な男前っぷりに驚きを隠せなかった。



会計を済ました臨也が外に出てくれば、頭を下げお礼を言う。





「じゃぁさ、一つ教えてもらっても良い?」



「はい?」

「君の本当の名前は奏多、それとも可憐?」


「私の本当の名前は、可憐です」


「そう。とりあえず今日のところはそれだけで良いや。俺の名前を君は知ってるのに、君の名前を俺が知らないのはフェアじゃないでしょ。だからねぇ」




ぐーっと身体を伸ばすかのように背伸びをする彼を見つめる。





「また連絡するよ、可憐ちゃん。君のことはまだまだ知りたいからねぇ」




ヒラヒラと手を振りながら去って行く後ろ姿を見つめた。
















《どうして…っ、どうして!》


《君は知らない方が良いんじゃないかなぁ。世の中にはね、知らない方が良いことっていうのがあるんだよ》

《絶対に…!絶対に許さない》


《ご勝手にどうぞ》


















ポケットに入れていた携帯が鳴り、ふと我に返る。

久しぶりに昔のことを思い出してしまった。


携帯の画面を見れば、数字の羅列が並ぶ。




「はい、どちら様ですか?」


『どちら様、なんてひどいなぁー。さっきまで会ってたじゃないか』

「折原さん…?!」


『とりあえずこれ、俺の番号だから必ず登録しておいて。またかけるから。じゃぁ、一応女の子みたいだから帰り道に気をつけて』




どうして、携帯の番号を教えてくれたんですか?、そう告げようとすれば再び自分の用件が終わったのかすぐに切られてしまう。





「一応女の子、って何よ…」







帰路につきながら彼の名前を携帯の中に入れるのだった。
















...to be continued



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どちらの思惑もはっきりしないお話ですね。

そしてちょっと謎な過去。
まだまだはっきりさせるつもりはありません…!

これ、夢になるのか?ww
でもほら、携帯の番号交換したしね?


ゆらの中の折原さんは自分の用件を伝えたらこちらの言葉を聞く前に電話切るイメージw



2012/4/8