明日への涙
ここは裏庭にある墓地。
そうここには朱雀のために散った者たちが眠る場所。
今は皆の記憶にはない者たちが居る場所である。
そこに静かに佇む一人の0組のマントを纏う少女。
「名前」
彼女の名前を呼ぶとゆっくりとこちらを振り向き彼の名を呼ぶ。
「エース、どうしたの?」
「そろそろ中に入らなきゃ風邪をひくぞ」
「うん、ありがとう。でもあと少しだけ…」
そう言うと彼女は手を胸の前で組み、この戦いで亡くなった者たちに涙を流し祈りを捧げる。
エースはそっと見守るしか出来なかった。
祈りを終えた彼女に少し温くなってしまったココアを手渡す。
「いつもありがとう」
先程とはうって変わって綺麗な笑顔を向ける彼女。
彼女なりの切り替えなのだ。
彼女は強い。
が、優しすぎるのだ。
ココアを受け取る時に彼女の冷たい指先がエースの手に少し触れる。
エースは彼女の冷たくなった手を温めるかのように握る。
「こんなに冷たくなってるだろう。だから早く中に、って」
「エースは心配しすぎだよ」
エースはココアを飲みながら教室に戻る彼女の後ろ姿を見守ることしか出来なく、拳を強く握りしめた。
戦局は良くなるどころか悪くなっていく一方であった。
0組のみんなを鼓舞し、励ます名前。
「頑張ろう、みんな」
彼女の一言に0組のみんなは声をあげる。
彼女は0組の中心なのだ。
戦場には自分たちと同じ年齢の候補生たちが冷たくなり、動かなくなっていた。
戦場を駆け抜ける彼女は横目でちらりと見ては唇を強く噛み締める。
作戦が終わった戦場。
勝利の喜びの影にはたくさんの散った命がある。
作戦が終わってすぐの戦場はまさに地獄絵図だ。
たくさんの候補生たちの屍が累々と積み上げられている。
その中に一人佇む名前の後ろ姿は今にも消えてしまいそうだった。
「…名前」
「ねぇ、エース。私たち0組が居なかったら彼らは死ななくても済んだのかな?」
クリスタルジャマーすらも効かない0組。
それは特別な存在。
0組の任務を成功させるために囮となり前線で戦った候補生たちが居たのは紛れもない事実。
「私のせいだ……」
小さな震える声でそう言うと、唇を噛み締め拳を強く握る名前。
エースはその拳を優しく包みこむかのように握り締める。
「だから、早くこんな戦いを終わらせるために僕たちは戦うんだろう?」
「………………」
「朱雀に勝利を導くのが僕たちが彼らに出来る唯一の償いなんじゃないのか?…後悔も情けも必要とはしていない」
「……エース、私は…っ」
彼女の強く握った拳をゆっくりと解く。
そして大きな温かい手が名前の手を包み込む。
「僕がついているから、今は好きに泣けば良い。だから一人では泣かないで欲しい」
静かに涙を流す名前は綺麗だった。
エースは名前の頭を自分の肩の上に乗っける。
そして優しく背中を擦るのだった。
―――明日への涙
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お正月企画第二弾!
黒波さまのリクエストで切甘で重い現実に悩む夢主の手を優しく握りしめるエースさん、とのことで生まれました夢がこちらとなります…!
隊長の手は冷たいけど、エースくんの手は絶対に温かいと思うんです!←
って、ちゃんとリクエストに添えているのか不安です。
お持ち帰りはご本人様のみですのであしからず。
2012/1/5
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[mokuji]
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