ゆっくりと進む時の中で





誰も居なくなった教室。

隣りに座る彼と二人っきりの空間。


真剣に勉強をしている彼をチラリと横目で見る。




「どうした」

「え、ううん」


「なにかあるんじゃないのか」

「なんでもないってば」



真剣なまなざしのクラサメに魅入っただなんて言えない。


自分のノートに目を戻す。

そしてまたチラリとクラサメを横目で見ると、今度はクラサメがこちらを見ていた。



「なに?」

「いや、なんでもない」


「なによー」



そう言って二人向かいあって静かに笑う。



「そろそろ帰るか?」


クラサメのその一言に頷くと二人は帰る支度をする。




二人歩く帰り道。

すぐに触れることが出来る位置にある手。



クラサメと付き合うことになって一週間がたった。

気持ちを伝えてこの関係になってからも今までと変わりない。



ふと、ぶつかる手。




「…すまない」


「え、あぁ。ごめんね」




手を繋ぎたいだなんて言えない。

手先が少し触れただけでもその触れた部分が熱くなる。




「ねぇ、クラサメ」


「どうした」



「…やっぱりなんでもない」



無言で歩く道のり。

この無言は嫌ではない。
クラサメとの優しい時間。



少し肌寒く手が冷たくなってきたので口元に両手をあてて息を吐き温める。

そして出来るだけ上着の裾の中に手を入れる。




「名前」


「ん?」

「手を貸せ」



突然どうしたのかと思いながらもクラサメ側の手を差し出す。


すると優しく握られ、クラサメの上着のポケットの中にいれらる手。



「嫌、か?」


「…ううん、嫌じゃない」




手に心臓があるんじゃないかと錯覚するぐらいに手が熱くなり、ドクドクしている。



そうこうしている内に女子寮へと近付く。

それは別れの合図。




繋がれた手を放したくはなくて、その場に立ち止まる。



「着いたぞ、帰らないのか」

「あ、うん。帰るよ」




名残惜しくも繋がれた手を放し、寮の方へと歩いて行く。



本当はもっと一緒に居たい。

もっと触れて欲しい。

もっと触れたい。




そんなことを彼に告げることは出来ずに寮へと重い足取りで歩いて行く。






すると突然後ろから抱き締められ、優しい体温を背中に感じ、耳元には彼の少し荒い息遣いが聞こえる。




「すまない、名前を放したくはない。嫌なら振りほどいてくれ」



振りほどくわけはなく、私はゆっくりと彼の腕の中で彼の方へと振り返る。



「私も、離れたくない」




そう言うと肌寒い風が吹く中、彼の温かい腕の中で甘い甘いキスをする。

それは遠慮がちなものであったが、とても優しいキスだった。




ゆっくりゆっくりと進めば良い。
それが私たちのペースなのだから。


この時の中で彼と過ごす大切な時間。


私たちの未来はこれからなのだから。














―――ゆっくりと進む時の中で



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泡沫恋模様の神憐さまへ相互記念として捧げます!

へっぽこ夢で大変申し訳ありません!!
しかもこの夢、書き終わってから半分消えたという悲劇がありました←

ちなみにリクエスト内容は付き合いたての二人で初々しい感じとのことでしたが、私のない文才ではこれが限界だったようです!
すみません!!!

神憐ちゃん、これからも仲良くしてね!


ということで、お持ち帰りはご本人様だけとなっております故、ご了承くださいませ。


2012/1/2



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