雨の日が、待ち遠しくなりました。





ポツ・・・ポツと、灰色の空から雨粒が落ちてくる。
風に乗って、地面を叩く透明は、空の流す涙ようだった。

「あ、めあーめふーれふーれ・・・」

立ち込める土の匂いと湿気、どこか普段あんなににぎやかな群集は静まり返り、
雨は世界に私を一人きりにしているようで幻想的だった。



お昼休み、外に出る人もいないこの外に続く廊下。
同じ1組の数少ない友人、ユリアは最近彼氏さん、が出来たようで、順風満帆な日々を過ごしているよう。
まぁ、その間に一悶着あったみたいだけれど。
0組の隊長さんとプラチナブロンドの髪の毛の少年の修羅場を見てしまった身としては、少し罪悪感があった。
結局無事、彼女の思いは実ったようだ。何はともあれ、彼女が幸せならよかったと思う。

そんなことを考えながら雨の音を聞いていれば、【いつもの場所】に例の金髪少年を発見した。
少年が背にもたれて寝ているその場所は、塔の上にあるテラスが丁度屋根になっていて、私の雨の日の読書スポットだった。
もっとも、風が強ければその屋根も意味を成さないのだけど。

私は彼のいるところまで小走りで向かう。
小雨のこの状態なら多少濡れてもさして問題はないだろう。
少年の元までついたはいいけれど、彼はどうやら熟睡しているようで。
私は仕方なく彼の隣に腰を下ろし、本を読み始める。

しかし、数分すると、少年は私の肩にもたれかかってきた。
このままでは私も本に集中できないし、何より息遣いが間近に聞こえてどきどきしてしまう。

「えっと・・・あの、」

「ん・・・・・・・・・、」

「あのお、0組の君?」

「・・・・・・。」


「失恋したそこの君、」

「・・・はっ!!」

「あ、おはようございます。」

どうやら彼であっていたみたいだ。

「あの、君は・・・?」

「ああ、すみません。
今日は先客がいたのに勝手にお邪魔してしまって。
ここで寝ていると風邪を引きますよ?」

「答えになってな・・・ていうか失恋って、」

「・・・・・・えーと、元気出してください。」

自分でも答えになっていないことは十分理解できる。
でも、彼がこの場を去っていってしまうのは少々寂しいような気がした。

「・・・はぁ。なんで僕が失恋したこと知ってるの。」

彼は半ば諦め気味にそうたずねてきた。

「えっと、クラサメ武官との修羅場を偶然目の当たりに。
ユリアのこと、だったんですよね?」

「・・・はぁ。そんなことまで知ってるんだ。」

明らかに落ち込んだ彼を見て、この話題はまずかっただろうかと少し焦る。
けれど・・・あの会話を聞いている限り彼はきっと良い人だ。

「・・・私は、彼女の幸せを何よりも願った貴方は素敵だと思いますよ。
なかなか忘れられるものではないかもしれませんが、貴方ならきっと良い思い出として乗り越えていけます。
どうか、自分や彼女、クラサメ武官を責めないであげてください。」

「・・・・・・、ふ」

彼はしばらく私の顔をじっと見ると、気が抜けたかのような笑顔を見せた。
こっちは真剣に言葉を選びながら話しているのに、ちょっと失礼だと思った。

「な、なんですか。
私、何かおかしなこと、いいましたか?」

「いや。
君の話を聞いていたら、うじうじしていた自分が情けなくなったよ。
ありがとう、おかげで吹っ切れそうだ。」

なんだ、良かった。
あんなことを言うのはおせっかいだと思ったけど、ちゃんと人の役に立てて安心した。
彼は本当に良い人なんだろう。0組の皆は非情だとか皆言うけれど、私はまったくそうではないと思う。
彼を見ていれば、分かる。彼らも私と同じ、色恋沙汰でうじうじしてしまう少年少女なんだ。

「お礼を言われるような事はしていませんよ。
それより、何故ここに?今日はあいにくこの雨ですし、人は来ないと思っていたのですが。」

「ああ、勉強に身が入らなかったから。
頭を冷やそうと思っていたんだけど、この場所が思いのほか過ごしやすくて。
ここで本とか読めたら快適だろうな。」

「!・・・そうですよね!
雨音を聞きながらここでのんびりするのは、至福の時間です。」

「じゃあ、君は雨の日はいつもここに?」

「はい、誰もいない場所で、静かに雨音を聴いている時間って、一時現実を忘れられるようで好きなんです。
って、結局現実逃避しているだけなんですけどね・・・。」

二人、そんな話をしながら雨の日の休み時間を過ごした。
いつもならこの1時間の休息が長いように思えるけれど、今日はとても早く感じた。
だって、チャイムの音がこんなにも惜しくなることはなかったから。

予鈴の鐘を聞きながら、お互い黙る。
どうしよう・・・、また会いたいって言ったら、おこがましいかな・・・。

「「あの、」」

「あ!はい、何でしょうか!?」

「あ、いや、君から先に、」

「いえ、たいした話ではないのでどうぞ!」

「それを言うならこっちこそ・・・、」

「「・・・・・・。」」

そしてお互い、笑いあう。
まるでお見合いみたいだな、なんておもった。

「ふふ、すみません。
また、一緒にお話できないかなって。」

「あ、僕もそれを言おうとしていたんだ。
また、ここに来てもいいかな。」

「あ、はい!!
じゃあ次の雨の日・・・またここで。」

「うん、じゃ・・・、またね。」

「はい・・・また。」




小走りで走り去る彼の背を見送り、名前聞き忘れたな、なんて考えていた。
まだ空は灰色を映していて、そんなお昼時。











雨の日が、待ち遠しくなりました。
(2万粒目の)(雨が降る。)









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祝、白昼夢訪問者数20000hitということで、相互リンクしてくださっているトランキライザーの秋空さまより、我が家の恋落ちシリーズのエースくんのその後を書いた小説をいただいてしまいました〜!!

もう本当に素敵すぎてゆらさん号泣ですっ

私が書いた小説の内容からこうして小説を書いていただけるって本当に幸せすぎます!
それに我がサイトの雰囲気に合わせてくださって、雨をモチーフにしてくださっていてもう本当にうれしすぎて清水の舞台から飛び降りm(ry

秋空さん、いつもありがとうございます!
これからもゆらと仲良くしてくださいね。


秋空さんに心より感謝申し上げます。





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