おやすみ大作戦
朝一番に上司であるカトル准将の執務室に行くと、そこにはすでに職務を始めている准将の姿。
たしか昨日も朝方まで彼の執務室の電気はついていたはずだ。
「准将、昨日も遅かったのにこんな朝早くからもう執務をしているんですか?」
「あぁ、名前か。最近なにかと忙しくてな」
そう答えると彼は再び真剣に執務をはじめる。
なにか出来ることはないか、そう考えたカトルの補佐官である名前は軍の中心部である場所へと向かう。
名前がここへ来た理由は、明日一日の准将の執務は何か調べるため。
「准将の明日までの職務は…っと」
ざっと彼の職務予定を見れば、軍の偵察やシド様に頼まれている雑用と主に書類提出ばかりであった。
その職務なら補佐官である名前が代行しても問題はないだろう。
名前は准将に休んでもらうべく、自分の執務を後回しにして彼の執務に取りかかるのであった。
まずは軍の偵察だ。
軍事工場に赴きカトル准将の代わりに見に来たと伝えると、軍事工場の責任者がやって来る。
広い工場内を端から端まで歩き、戦闘機などの部品を作っている機械を一つ一つ見回る。
全て見回り、工場長にのちに書類を提出すると伝える。
まずは一つ終了だ。
次はシド様のもとへと行く。
「シド様、准将の代わりに私が参りました」
「おぉ、カトルはどうした?」
「准将には明日お休みいただこうかと考えておりまして、私が職務を代行しております」
「そうか、頑張れ」
シド様は怖そうに見えるが、意外と接していけばお優しい。
私は何度か准将の代わりにこうしてお会いして職務を代行したことがあるので、お会いしたのは初めてではない。
「で、悪いがカトルに頼もうと思っていた仕事とはな……」
今、私は首都から少し離れた街にある和菓子屋さんに来ている。
信じられないがこれも職務だ。
和菓子を買うと急いで首都のある場所へと戻る。
「シド様、買って参りました」
「おぉ、これだ。悪いな」
「いえ!あの、シド様にお願いがございます」
「なんだ?」
「明日、准将がシド様のもとへと参りましたら准将に一日のお休みを与えてくださいませんでしょうか…?」
私がそう言うと、シド様は微笑み頷いた。
「ありがとうございます!」
これで二つ目の職務終了。
あとは書類だ。
今日の工場の書類からはじめ、その他の書類も片付ける。
どの書類もあとは准将の判子があればおしまいだ。
書類を真剣に片付けていると時刻は午前2時を回っており、慌てて片付けた書類を准将の執務室へと持っていく。
「准将、まだ居られますか?」
「あぁ」
「失礼致します、あのこちらの書類に目を通して印をください」
准将の前に書類を置くとほとんど中身を読まずに印を押す。
「書類、確認しないんですか?」
「名前が作る書類は我が作る書類よりも完璧だからな」
笑いながらそういう准将。
少し恥ずかしくて下を向く。
「これで最後だな」
最後の書類に印を押す。
「准将、あまり働きすぎないでくださいね」
お前もな、と言う准将に一礼をして執務室を出て行く。
自分の執務室に戻ると、次は自分の書類が残っていたので自分の書類へと差し掛かったのだった。
書類があと少しという量になり、外を見るとすっかり明るくなっていた。
「もうこんな時間…」
時計はとっくに職務の始業時間を指していた。
今頃、准将は仕事が終わっていて休みを頂いて身体を休めているだろうか。
すると突然開かれる扉。
びっくりしながら扉を見ると、そこに立っているは准将ご本人。
「お前、帰っていないのではないか?」
「え、あぁ、まぁ」
そう言葉を濁す私に少し眉間に皺を寄せて近づく。
「我の仕事を全て終わらせたのは名前なのだろう」
「え、なんのことでしょうか」
「シド様から聞いた」
「あら、聞いちゃいました?」
笑いながら言うと、彼は真剣な眼差しで私を見つめる。
「ほら、半分書類を貸せ」
せっかく彼の仕事を終わらせて、彼に休んでもらおうと思ったのに私の書類を手伝わせては意味がない。
「私は大丈夫ですから、ちゃんとお休みになってください!」
「いいから、貸すんだ。…上司命令だ」
「え…、上司命令って」
無理矢理書類を奪われ、准将はその書類を片付けてはじめる。
「准将、それでは意味がないじゃないですか」
「だから早く終わらせて休みを満喫するぞ」
「え?」
「この書類が終わったらお前も休みだ、だから出かけるぞ」
「それはどういうことですか」
「我一人で休んでも楽しくはないだろう」
優しく微笑む准将から慌てて目をそらし、書類を片付ける。
書類が全て終わったのはお昼頃で、二人で准将の操縦する機体に乗って出かける。
街で買い物をしてみたり、ご飯を食べてみたりして二人の時間を過ごす。
夕方頃になり准将が見せたいものがあるから機体に乗るぞ、と言うので二人、機体に乗る。
するととても高い場所まで上昇する。
「前、見てみろ」
そう言われて、前を見てみるとそこには一面の空で夕日が輝いていた。
「綺麗……」
「今日のお礼だ」
「お礼、だなんて。私が勝手にしたことですから」
「いや、いつも名前には感謝している。しかし、無理もしないで欲しい」
無理なんかしてません、そう言おうとすると言葉の途中で目の下の隈をそっと撫でられる。
「…!准将……、私…」
「言わなくて良い」
目の下から頬を撫でられ、そのまま身体を引き寄せるられる。
あっという間に准将の腕の中に収まってしまい、心臓は破裂寸前だった。
そして、夕日の中で甘い甘い口付けを…。
―――おやすみ大作戦
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撃沈…!
准将で甘夢って難しい!
こちらお正月企画第三弾で稚捺さまリクエストの准将で忙しい彼の仕事を先回りして夢主が終わらせて准将に休ませる、と言う内容だったのですがあえなく撃沈。
あまり甘くもなければ先回りした感もあまり出せていない←
似非シド様出ちゃってるし…
そんなこんなで第三弾おしまいでございます。
稚捺さま、いつも我がサイトにご訪問ありがとうございます!
上手く准将を書けるようになるため精進して参りますので、今後ともよろしくお願いします!
2012/1/7
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[mokuji]
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