07.



 



先遣隊として先に街に入って行った9組の候補生たちの壊滅を知ったのは、クラサメが魔導院に着いてからであった。


あの時、想像以上の敵が居るとわかった時、クラサメが所属していた2組へは撤退命令が下っていた。
そして、先行していた9組の者たちは大丈夫だと伝えられていた。

それが嘘だったと知ったのは、魔導院に帰ってきたクラサメを迎えたカヅサの言葉であった。





「クラサメくん!無事でよかったよ!!」


「無事も何も、ただ待機していただけだからな」

「そうだったのかい、先行した9組は壊滅したと報告があったから心配したよ」

「……何?」

「え?クラサメくん現場近くに居たのに知らなかったの?―――――」








カヅサの言葉を聞いたクラサメは軍令部へと走った。

軍令部の扉を開けると、重い空気が流れており、自分のクラスの隊長が立っていた。




「……隊長、」


「クラサメ、か。どうしたんだ」

「先行していた9組が壊滅したって本当なんですか?それに9組の隊長も亡くなられたんですよね?」

「情報が早いな、本当だ」


「9組が壊滅って、生き残りは居ないんですか?生き残りが居るはずです」




あの彼女は先行として潜入すると言っていた。
ということは、彼女も壊滅したと言われている中に居たということだ。

しかしクラサメは彼女の記憶を失ってはいなかった。

それにカヅサも彼女を覚えている、と言っていた。




「……生き残りが居るとは考えられない。現在、朱雀兵が潜入していた9組全ての候補生のノーウィングタグを回収したと報告が入っている」


「そんなはずは…!」

「なんだ、知り合いでも居たのか?だったら名前を言ってくれれば捜索も出来るが…」

「名前は、……知らないんです。しかし知り合いが先行すると言ってあの場所に居ました。だから…!」


「だったら、忘れろ」

「え…?」


「あの現場あたりは一応捜索した。しかし何処にも生き残りは居なかった。もし生きていたとするなら、白虎に投降したということだ。それは裏切り者ということだ」




クラサメは頭が真っ白になった。

彼女が白虎に投降するはずがない。
しかしノーウィングタグは全て回収されているのに、彼女の姿は現場には無かったということは…。


もう何も考えられなくなっていた。








気がつけば、いつの間にかクラサメはあの桜の木の前に立っていた。







「………クラサメくん、」


「…カヅサか」



振り返ればそこにはいつもにはないような神妙な顔をしたカヅサが立っていた。



「彼女、行方不明なんだってね」


「あぁ、しかし潜入した生徒全員のノーウィングタグは全て回収したそうだ」

「クラサメくんは彼女はどうしたと思ってるのかい?」

「……白虎に、投降した…か」


「そんな上の言葉を信用しているのかい?本当の彼女を知っているのはクラサメくんなんじゃないのかい?」

「それは………」


「きっと彼女には回避出来なかったような事情があったに違いないよ」




胸の中でモヤモヤしていたことがすーっとした気がした。





「…俺が信じなきゃ駄目、だよな?」







満開に咲いていた桜の花は、散り散りに散り始めていたのだった。










――――Cherry blossom The End.